15 怖くない
UPする順番を間違えてしまいすみません陳┏○┓謝
直ぐに直しましたεミ(o_□_)o
(ヒカリ)
「チィ〜チッチッチ!ほら、ニャンニャン怖くな〜い怖くな〜い。コッチにおいで〜チッチッチ〜♬ 」
「…………。」
この俺に向かって訳のわからない事を言いながら、指を振り舌を鳴らす中年男。
……気でも狂ったか?
そう思ったが、ツン……と香る匂いから、浴びただけでどうやら酒に入っていた目眩薬がバッチリ効いてしまったようだった。
なんて弱い身体だ……。
こんな薄い薬品を少し浴びただけでデバフ状態になってしまうイシにため息を漏らし、そのままポイッと手にあるコップを投げてやった。
大方あの女共が俺を酔わせて、襲おうとでも企んだのだろう。
それには気付いていたが、俺がここにいるのにこの場を去ろうとしていたイシに、カッ!と怒りが湧いた。
たかが荷物番のくせに、どこに行こうとしているのか?
俺へのギフトなのだから、常に俺の事を見て俺の為に動くのが仕事のくせに!
そう思い、気がつけば怒りのまま酒を頭からぶっかけてしまった。
セーブできないイライラに心は支配され、周りが引くほど怒りのオーラを出しているというのに……やはりイシは変わらずマイペースだ。
一切無視しているのに、モソモソと今度は近づいてくる。
「よ〜し、よし。じゃあ、オリービアの実は好きかな〜?鰹節を掛けてあげよう。」
<オリービアの実>
小さくて塩実がきいた木の実
酒のおつまみとして人気がある
パッパッ!と鰹節を振りかけたオリービアの実を差し出してきたので、俺はその身体をドンッ!と突き飛ばした。
すると、イシは抵抗など一切なく後ろに倒れ不思議そうに見上げてくるので、俺は盛大に眉を潜める。
「うざいんだよ。本当に気持ち悪い。俺はあんたが大嫌いなんだ。
だからさっさと異世界に帰って貰うために頑張ってんの。
分かったら、できるだけ俺の視界に入らないでくれる?
ここまで言われたら流石の馬鹿でも分かるでしょ?」
ハッキリとそう告げてやると、イシはグスングスンと鼻を啜りながら泣き出した。
『イシを傷つけてやった。』
その事でスッキリする…………かと思いきや、イライラは加速してしまい、その忌々しさに顔は更に歪む。
何をしてもイライラする!もうこれ以上関わりたくない!!
心の底からそう思い、視界から消そうとしたその時、イシが突然起き上がりスタスタと俺の真正面に立つ。
流石に怒り、俺に恨みをぶつけてくるのだろうと思って、目の前に立つイシを睨みつけてやったのだが…………何とイシは、俺の頭をグシャグシャ〜!とかき混ぜてきた。
「ありがとう!お前は本当に優しくていい子だ。はい、いい子いい子〜いい子いい子〜♬ぴゅるるるる〜♬」
最後は口笛まで吹きだすという、予想だにしなかった行動と言動に目は点になってしまい、離れた所にいる女達も同様にキョトンとしている様子が見て取れた。
「……あんた、狂っているよ。俺のどこがいい子なわけ?」
どう考えても、両極端とも言える俺の行動や言動。
優しいなどとはとてもじゃないが言えないはずだが…………イシはやっぱりニコニコと笑いながら答えた。
「結局は俺を帰そうとしてくれる所だよ。
だって普通は、そんな嫌いなら関係ないって放り出すだろう?
よっ!男の中の男!責任感の鬼!ニャンニャン勇者!」
ピューピュー!と下品に吹く口笛に、流石に何もいう気が起きなくなってしまうと、イシは、そのままズドンッ!と俺の両脇に手を差し込む。
そして────う〜ん……う〜ん……と一生懸命俺の身体を持ち上げようと奮闘するが、力が貧弱すぎて俺の身体は持ち上がらなかった。
「……何?」
謎の行動にそう問うたが、イシは一生懸命過ぎて聞こえてない様子。
そしてやっと無理だと悟ったのか、今度は俺の後ろにテッテッテ〜と回り込み、そのままワシッ!!と背中に抱きついてきた!!
その時の衝撃は凄まじく、思わず驚き固まってしまう。
それを良いことにイシは俺の身体にしがみつくと、そのままゆっすゆっすと自分ごと身体を揺らしてきたので、俺の身体はそれに合わせて右へ左へ小さく揺らされてしまった。
「…………はっ?……ねぇ、何?」
慌てて我に帰った俺が、ドス黒い怒りのオーラを滲ませながらそう言うと、イシはその動きを止めずに答えた。
「良い子のニャンニャン勇者を褒めてあげよう!
最近はご飯もちゃんと食べるし〜ちゃんと嫌いなモノも食べるし〜ちゃんと寝てるし、偉いえら〜い!
お酒は飲まないのも分かったから、次から出さないでおいてあげよ〜っと!
オリービアの実は嫌いだったかな?」
そう言いながら俺にしがみつく手をスッ……と離し、握っていたせいで潰れているオリービアの実を見せてくるイシ。
それをジッと見下ろしながらつい「……嫌いじゃない……。」と答えると、後ろにいるイシからは嬉しそうな雰囲気が漂った。
「じゃあ、めでたくオリービアの実は、おかず候補に昇格だ!やっほ〜い、めでたいめでたい。」
そしてそのまま手の平にあった潰れている実を摘まむと、そのままスイ〜と俺の口まで持ってきて、後ろからでは見えないためか俺の鼻や頬に実をペタペタくっつけてくる。
そしてやがて口に辿りつくと、そのままその実を捩じ込んでくるため、反射的にそれを食べてしまったが────そこでやっと俺は完全に覚醒した。




