1 勇者ハーレムパーティーと俺
「凄ぉぉ〜い♡勇者様ぁぁ〜ん!
その魔法は失われた古代魔法ですよ〜?!
それを使ってアッサリモンスターを倒しちゃうなんてぇ〜流石は選ばれし勇者様ですぅ〜♡」
ポヨヨ〜ン♡とした豊満ボディーを勇者と呼ばれた男にくっつけながら、キャピキャピはしゃいでいるのは、魔法使いのよく着るローブ……には全く見えないピッチリラインにギリギリまでスリットが入った、黒いドレス風ローブを身につけたセクシー系美女。
真紅のサラサラロングヘアーに、ぽってり唇。
そこにナイスバディの巨乳とくれば、嫌いという男などいない。
彼女は<魔法使い>の【メルク】
「ちょっと!さっきからくっつきすぎじゃない!?
離れなさいよ!!このお乳デブ!!」
プンプン怒りながらメルクを指差す女は、貧乳ながらもスラリとしたスレンダーな体型に、細いウエストに手足というナイススタイル。
クリクリパッチリ、少しだけ吊り気味の目が印象的な可愛い系の少女。
金髪にツインテールにプンプンした顔とくれば浮かんでくる言葉は『ツンデレ』。
白い軽さ重視の鎧に、かわいい顔に似合わぬゴツい大剣を背負っている。
彼女は<戦士>の【アイリーン】
激怒するアイリーンに、メルクはツツーン!と顔を背けて無視する。
するとそんな態度に、アイリーンが更にヒートアップしそうになった、その時────……。
「まぁまぁ、落ち着いて下さいよ〜。
メルクさん、確かに少々距離が近いですよ。
勇者様が凄いのは分かってますから少し離れて下さい。
失礼ですよ。」
おっとりした雰囲気を持った、メルクに負けず劣らずの巨乳を持った女が、ニコニコと笑いながらメルクを嗜める。
淡い栗色の長い髪に毛先が軽くカールしているしている事から、パッと見て高貴な生まれのお嬢様が頭に浮かぶ清楚系タイプ少女。
穏やかそうなタレ目と目の下にあるほくろがなんとも色っぽく、近くにいるとドキッ!としてしまうのは仕方がないと思ってしまう。
聖職者が着る法衣に、手には聖書。
まさに絵に書いたようなザ・聖人の彼女は────<回復士>の【キュア】だ。
キュアが仲裁に入っても、まだまだ一触即発な雰囲気が残る中、非常にマイペースに横から入り込んでくる人物が現れた。
「勇者様〜勇者様!
魔法じゃなくて今度は格闘技で勝負しようぜ!
またこの間の動き、教えてくれよ!」
ぴょんぴょん飛び回りながら勇者におねだりしているのは、まだ小さい成長段階の身体に、頭には犬の耳、そしてお尻にはふさふさ尻尾が生えている【獣人】と呼ばれる、人と獣の中間種族の元気な女の子。
フワフワの尻尾同様、フワッとした青髪のボブカットに、ニッコリ明るい笑顔は見るものを元気にしてくれる、パーティーのムードメイカー。
両手にはゴツいナックルを嵌めていて、それを両手で打ち付け二ヒヒ〜と笑う。
そのちびっ子少女は<格闘家>の【ルーン】
それに、またしてもアイリーンが「駄目!」と言ったもんだから、そのままルーンと二人でギャーギャーと喧嘩を始めてしまい、その隙に……と、メルクが更に勇者にくっつこうとした。
すると、それを見たアイリーンとルーンがギャーギャー……。
いいねぇ〜。
これぞ王道ハーレムって感じぃ〜?
ニッコリとその微笑ましさに笑ったが、直ぐに苦笑いに変わる。
だって、そんなハーレムの所有者『勇者』────ではない自分には、全く関係のないお話だから!
俺は少し離れた川で全員分の洗濯物を洗いながら、はぁ〜……とため息をついた。
<荷物番>
【イシ】(元名︰山野 石郎)
これが俺の名前。
ちなみに『荷物番って何?』と言われると、一言『雑用』という言葉が返ってくるお仕事だ。
能力、なし。
外見、平凡。
唯一特別感がある事は、生まれ育ったのがここではない地球という異世界であるという事だけ。
「……ここは王道の勇者にしてくれよぉ〜。」
布を傷つけない様に優しく汚れを落としながら、自分の境遇を嘆く。
この世界は、所謂地球でいうRPGゲーム的な……剣と魔法ありきの世界で、文化でいうと中世ヨーロッパにそっくりな世界。
化学などが発達していないので、地球に当然の様にあった便利な物は基本何もないが、その代わり魔法という超常現象の様なモノが当たり前の様にあって、この世界の人達は何不自由なく暮らしている。
つまり、それが全く使えない俺は、底辺中の底辺。
モンスターなる化け物蔓延るこの世界では、全くの役立たずというわけだ。
疲れてきた手を一旦止めて、小休憩。
そして少し休んで直ぐ、またコシコシと洗濯を続ける。
更に年齢はアラサー、外見はその他大勢に問題なく紛れる容姿に平均身長に体重という・・寧ろこれだけ平均とれるヤツいる??と質問したくなるほど普通。
黒い髪に目、鼻、口は大きすぎず小さすぎず。
パッと見ただけでは忘れてしまう容姿であるため、小さい頃は『山に落ちている唯の石〜♬』なんて、よく揶揄われたもんだ。
「せめてホクロくらい顔につけてくれよな〜……。」
ブツブツと何一つ特徴をくれなかった神様?に文句を言いながら、視線を洗濯物からうるさく騒ぐ皆へと移す。
ギャーギャーと結局キュアも入れて騒ぐ美少女達……には目もくれず、完全なる無表情のまま佇んでいる絶世の美青年。
そいつこそが、このハーレムの所有者。
<勇者>の【ヒカリ】君だ!
「おおお〜……。」
距離が離れているにも関わらず、キラキラ光り輝くヒカリ君を見て、思わず目を細めた。
ヒカリ君を一言で表すと、とにかく『イケメン』。
寧ろこの言葉の方がヒカリ君のために創られたのだと言えるくらい、本当に信じられない程美しい顔をしている。
清潔感溢れるサラサラプラチナブロンドのナチュラルショートヘアー。
透き通る様な白い肌とくっきりとした目鼻立ちに、長いまつげ……パッチリお目々には、空色の宝石の様に輝く青い瞳が付いている。
そんな一つ一つが完璧な全パーツが奇跡の配置をしていて、誰も彼もが釘付けになっちゃうのは当たり前の……とにかく圧倒的な美しさを持つ。
「正直、あの美女ハーレ厶の中でも浮くぐらい美人だもんな〜……。」
思わずそう呟いてしまうくらいには、とにかく美形!その一点。
しかもそれだけでも神が与え給うた〜にも関わらず、平均身長の俺の頭2個分あるんじゃない?という高身長に、大抵の女子が大好き細マッチョ体型。
何か靴の中に高い台でも入れてるの??といいたくなるようなスラリと長い足!
そんなスーパーグットスタイルを持ち、更には剣も魔法も誰も敵う者なしのチート様。
そして神が選びし【勇者】様とあれば、そりゃ〜モテるわ!
もはや嫉妬心も湧かないあまりのレベル差に、ハハハ〜!と笑ってしまった。
勇者ハーレムパーティーと荷物番
これはそんな、俺達のお話。