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 涙を浮かべたマーマリナ義姉様に抱きしめられて、私は少し戸惑いつつも手を伸ばした。

 お義姉様の足元には、二歳になるお兄様夫妻の息子のシオンがきょとんとした顔で見上げている。

「シエラ、ごめんなさいね。私が嫁いでから、あなたになかなか会えないし、出かけた話も、お茶会をするような話も聞かないからおかしいと。さんざんデリアンにも伝えて、シエラの様子を聞いていたのに……」

 あぁ、普通の貴族の家で育ったマーマリナお義姉様から見れば友人を招かない、出かけない令嬢の生活は異様に見えるよね。

 アリアンお姉様は、夜会やお茶会、婚約者と出かけたりと結構外に行くのに私は一切出ていないもの。

 それは異様だと思われるのも頷ける。

 しかし、嫁いだばかりでお兄様の奥様になったとはいえ、侯爵家の女主人はお義母様。

 マーマリナお義姉様が口を出すことは、早々できなかったに違いない。

 だからお兄様を頼って、探ったにもかかわらず、お兄様もしっかり調べなかったと……。

 時には、同じ敷地にいる家族なのだからと茶に誘ってもお義母様とアリアンお姉様は来ていたけれど、私は一切来なかったのも気にしていたと。

 今年に入ってからは、シオンの散歩がてら本宅を伺って私を探していたという。

 どおりで、年の初めに洗濯や庭掃除をしていてマーマリナお義姉様を見かけたわけだわ。

 産まれたと聞いていた、シオンの姿もその時見かけたのよね。

 叔母になるけれど、全く顔も見たことがない人がお母様にくついてて大丈夫かしら?

 お義姉様に抱きしめられつつ、シオンを伺うとニコっと可愛い笑顔を向けてくれる。

 そういえば、人に笑いかけられたのも久しぶりだわ。

 怒り、嘲笑は散々もらっていたけれど。

「本当に、どれだけ訴えてもなかなかデリアンが動いてくれなくて。もう少し待ってもダメだったら、お義母様とアリアンがいないうちに本宅に行ってシエラを探そうと思っていたところよ」

 どうやら、私を本当に気にかけてくれていたのは皮肉にも血の繋がらないマーマリナお義姉様だけだったようだ。

 お父様もお兄様も、出かけない貴族令嬢の異常さには気づいていなかったみたいだしね。

「さ、シエラは着替えましょう!本来、あなたはメイド服なんて着なくていいのよ」

 そう言って、通された部屋は可愛らしい調度品と壁紙の部屋。

「二か月前に庭掃除しているとき、声をかけようとしたけれどシエラはさっと本宅へ行ってしまったでしょう? そのあと、どうにかできないかと思ってこちらに招けるように準備していたの」

 そんなマーマリナお義姉様の言葉に付いてきたカイウェンは、少々驚いた様子だった。

「今から服や靴、小物をご準備しようと思っていたのですが」

 カイウェンの言葉に、マーマリナお義姉様は頷いて答える。

「それはそれで準備したらいいわ。シエラはアイラザルド辺境伯に嫁ぐのですもの。嫁入り道具と共に、シエラの好きなものをたくさん作るといいわ」

 さて、好きなものも流行も、必要なものも分からない。

「マーマリナお義姉様、必要なものも流行も分からないので教えてくださると嬉しいです」

 私の言葉に、嬉しそうにほほ笑んでマーマリナお義姉様は明日はたくさん商会を呼ぶわと張り切っていた。





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