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執務室のドアをノックすると、クロムス様の執務室には今日はロイドが居たらしい。
顔を覗かせて、その後クロムス様へ向かって言った。
「クロムス様、シエラ様とサラサとドルツが来ていますよ」
そんな声かけに、クロムス様は穏やかな声で入ってもらえと言っているのが聞こえた。
「クロムス様、お仕事中にごめんなさい。この子を邸内でお世話する許可を頂きたくて」
私は腕の中のケット・シーを見せながら、クロムス様に聞く。
「にゃあ?」
私に抱っこされたまま、クロムス様を見上げて小首をかしげているケット・シーはリルとはまた違った可愛さがある。
もふもふの毛は虎柄なのに、子猫サイズのせいで可愛いが勝っている。
「リルと仲良くできそうなら良いのではないか?」
クロムス様はあっけないほどさらっと許可を出す。
「リル、仲良くできるかしら?」
私の問いかけに、リルは大丈夫というように「ウォン」と一声答えた。
「この子、猫妖精のケット・シーなので今は小さいですけれど。最終的には小さいリルくらいのサイズで二足歩行になるとアイラが教えてくれたのですが、邸内でも大丈夫でしょうか?」
そう、最終的には私より大きくなると聞いたときは驚いた。
けれど、出会った独りぼっちのこの子を放っておくことは出来なかった。
「リルがすでに邸宅内で自由なのだから、ケット・シーが一匹増えたとて問題ないさ。そのうち、クーシーも増えるんじゃないか?」
なんて、クロムス様は楽しそうに話す。
「それでは許可も得ましたし、今日からこの子はうちの子ということで」
「あぁ。それで、その子の名前はどうするんだ?」
それは、まだ考えていなかった。
虎柄のケット・シー。性別的には女の子っぽいのよね。
甘えん坊だけれど、ちょっとお嬢様な雰囲気もあって。
「リルの妹分ということで、ルーシーにします」
名づけると、自分の名前と分かったのかルーシーはにゃぁぁんと嬉しそうに長めに鳴いて返事をした。
やっぱりそのうちお喋りもする妖精さんとのことで人の話も理解している様子が見える。
「お腹がすいていると思うので、厨房でご飯を貰いに行こうと思います」
その言葉に、ドルツがニコリと笑うとそろそろ来ると思いますと言う。
すると、執務室のドアがノックされて現れたのはお皿を持ったライドだった。
「さっきメイドからの伝言で猫のご飯がいるって言うから持ってきたぞ。今日はラッキーだったな。魚だぞ」
差し出されたお皿には、川魚がほぐされてニンジンやカボチャの小さく切ったものと混ぜられている。
とっても美味しそうなご飯の様子に、私の腕からスルっと降りるとお皿に一目散だ。
「お、自分のだって分かったか?賢いなぁ」
ライドは置いたお皿に食いついたルーシーに、しっかりお皿を置いて食べさせた。




