4.00MHz 海に出るラジオ
さて、お次はおまちかね。
ホラーの定番、海水浴の話だ。
あれは俺が、沖縄にひとり旅行に行ったときの事だった。水族館やアメリカンビレッジなんてメジャーな観光スポットはひととおり周り終えて、折角だし泳ぐかって海に出たわけ。
けどガイドに載ってるような人気の海水浴場はどこもすし詰めでさ。朝の山ノ手線といい勝負ってくらい混んでた。
それでも泳ぐヤツは泳ぐんだろうけど、俺は人混みが苦手なタチでさ。思い切り泳げそうな場所はないかって探し回った。
炎天下にな。
自転車でな。
……そしたら奇跡的にあったんだよ。
ガイドにも乗ってない穴場のビーチが。
なんでも地元じゃ有名な心霊スポットだか自殺の名所だかで、遊泳禁止になってたらしい。メイワクな話だよな。
だけどまごう事なき青い海に、白い砂浜だ!
しかも客は俺ひとり!
クラゲやサメがいるってわけじゃないし、波も穏やかだしな。俺は岩陰で水着に着替えて、オーシャンブルーにダイブした。
気持ちよかったね、最高だった。
童心にかえって素潜りやバタフライを楽しんだ俺は、ぼんやりと浮かんでギラつく太陽を眺めていた。
そんなときだった。
俺の片足が、何かに引っ張られるような感覚があった。
最初は海藻でも引っかかったのかと思ったけど、脚にはなにも絡んでなかった。
その代わり、透き通った海の中に見えたんだよ。
【ラジオ】だ。
【ステレオ】の穴からぼこぼこと空気が漏れてた。
こんな綺麗な海にもゴミを棄てるやつがいるんだなって、なんとなく気分が悪くなってさ。もう切り上げようかと岸に向かって泳ぎ始めた。
すると ぐいいぃっ!! と、さっきより強い力で足首を引かれた。今度は危うく水中に引き摺り込まれそうになった。
「ごほっ! ごほっ!!」
口に入った海水を吐き出す。
あたりには誰もいない。
このままじゃヤバい。
「う、うわあっ!!誰か!!助けてくれ!!」
足にまとわりつこうとするナニカを死に物狂いで蹴り飛ばしながら、俺は命からがら岸に戻った。
砂浜に身体を投げ出し、なんとか肩で息をする。
海の方を見た俺は、ゾッとした。
水面から、無数の【アンテナ】が伸びていた。
それらがすべて、俺を手招きするように揺れていたのだ。