5.00MHz 恐怖!?ダッシュラジオ
次は俺がドライブに出かけたときの話だ。
コツコツ貯めたバイト代で中古車を買った俺は、首都高を超えて峠までドライブしようと計画したんだ。助手席に『最初に乗せてやるから』って約束してた彼女を乗せてさ、有頂天だった。
展望台で満天の星を見て、来年も絶対来ようぜって話した帰り道だったかな。彼女はすっかり隣で眠りこけてて、俺は深夜ラジオを流しながらハンドルを握ってた。
だけど慣れない長距離運転で疲れが溜まってたんだろうか?
つい、ウトウトしちゃってさ。
――ドシン!!!
衝撃と音でハッとして急ブレーキを踏んだ。
「きゃあっ、なに!?」
「大丈夫、見てくるから」
こんな深夜の山道だ、シカでもはねちまったかなと運転席から降りる。スマホのライトで恐る恐る照らすと、テールライトの影に【壊れたラジオ】が横たわってた。
俺は ほーっ と長い溜息を吐く。
幸いそこまでスピードが出てなかったおかげで、俺達に怪我は無かった。が、前開きのボンネットは見事に凹みができていた。
「くそっ、ついてないな……」
「ねえ、なんだったの?」
「なんでもない、ゴミにぶつかっただけだよ」
「不法投棄かしら?いやね」
運転席に戻ると、再びハンドルを握る。
今度は居眠りなんてしないように、安全運転でアクセルを踏んだ。
しばらくは何事もなく走っていた気がする。
――けど、なにかおかしいんだ。第六感ってヤツ?
車が重いっていうか、エンジンが重いっていうか。
夏場だってのに車内の空気も冷え始めていた。
それだけじゃない。
背後からじっとりと、睨めるような視線も感じていた。
それは車が進むにつれ、だんだんと強くなっている。
(……なんなんだよ……)
そんなわけないよな。と思いながらバックミラーに目をやった俺は、危うくハンドルを手放しそうになった。
車の後ろから、あの【ラジオ】が物凄いスピードで猛追してきていたのだ!
「ぎゃあああああああ!?」
「えっなに――ぎゃああああああああ!?」
アクセル全開でなんとか逃げ切ったが、車はあちこちぶつけてあえなくオシャカになった。
彼女とはそれ以来、会っていない。