6.00MHz 捨てられないラジオ
なああんた、「呪いのラジオ」の噂って知ってるか?
あれはそう――俺が社会人になりたての頃だったか。
年甲斐もなく廃墟巡りにハマっていた俺は、世界各地の廃校や廃トンネルを巡っては、そこに落ちているガラクタを記念品として持ち帰っていた。
ある夏の日、俺は某県の廃線になった駅を訪れた。
駅の名前はよく覚えてないが、とにかく俺は朽ちたベンチや剥がされた線路なんかを見て大興奮だった。いま思えば、そんなものの何が面白かったんだろうな。
で、いつものように『戦利品』を探し始めたわけだが……この日はなかなか決まらなくてな。
なんの気無しに開けた錆び付いたコインロッカーに、【壊れたラジオ】が入ってたんだ。
「もうこれでいいか」
珍しかったし、時間も遅かったしな。リュックに入れて安アパートに持ち帰ったんだ。
けどな、その【ラジオ】を拾った日からアンラッキーな事が立て続けに起こるようになったんだ。
馬券が外れたり、会社で怒られたり、飲み過ぎてUSBを落としたり――
――いやいや、当時の俺には大した事だったんだって!
それになんとなくあの【ラジオ】にイヤな感じがしていてな。オカルトってヤツかな?あと臭かったし。
不燃ゴミの日に、他のゴミと一緒に袋に入れて棄ててやったんだよ。
翌朝、目が覚めた俺は首を傾げた。
棄てたはずの【壊れたラジオ】が、部屋の真ん中に置かれていたんだ。
「おっかしいなあ」
次の不燃ゴミの日が待てなかった俺は、今度はビニール袋に入れてコンビニのゴミ箱に入れてきたんだ。……迷惑だからマネすんなよ?
ところがだ、翌朝になるとやっぱり【ラジオ】は俺の部屋の真ん中に戻っていた。
背筋が凍ったね。
それから俺は【ラジオ】をいろんな所に棄てにいった。池に沈めたり、燃やしたり、埋めたりもしてみた。
だけどやっぱりダメだった。
何度やっても、ソレは俺の部屋に戻ってきた。
とうとう俺は【ラジオ】を拾った場所に返す事にした。廃駅のコインロッカーだ。片道3時間の距離、車を飛ばした。
コインロッカーにソレを戻して、ガチャリと鉄扉を閉める。それから逃げるようにしてアパートに帰った。
ヘトヘトになって扉を開けた俺を出迎えたのは、部屋の中央にいつものように鎮座する【ラジオ】だった。
愕然とする俺。
だがこの直後、俺は更なる恐怖に襲われることになる。
『どうしてぼくをすてたの』
――と。
壁一面に真っ赤な文字で書かれていたんだ。