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L3 killing of genius "H"  作者: 迫田啓伸
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Hの逃走を描く

 通りを一人で歩きました。

 特に目的も何もなく、進んでいきました。

 すれ違う人たちは、私が見えていないかのようでした。

 その時の彼ら、彼女らの表情は明るかった。

 私のように暗く沈んでいる人はいなかったように思えます。

 取り留めのないことを、さも楽しそうに話していました。

 どこからともなく、人が沸いて出るようでした。

 数え切れないほどの人の波の中に、私はいます。

 が、その瞬間私一人だけ、世界から切り離されていました。

 社会は、私を必要としていない。

 私の周囲には汗水流して働く人や、知っている人たち同士で人生を楽しんでいる人。

 将来のために勉強している人も。

 少なくとも、皆さん社会に何らかの形で関わっています。

 社会でそれぞれが役割を持って、生活しているのです。

 私にはそのような役割は、ありません。あるかもしれませんが、指名手配中の凶悪犯。

 このような役割を、誰が欲しがるでしょうか。

 周りは、楽しそうな顔をしている人ばかりだというのに。

 部屋に引きこもって、窓から空を見上げて、何をしたらいいか分からなかった時がありました。

 親は、そんな私の存在が恥ずかしかったのに違いありません。

 言われる通りに勉強し、生活態度でも問題を起こさなかった。期待に応えようと努力もした。おかげで、評判の良い学生を演じることができました。

成績が低かったことは置いておいて。

それでも、親の思い描く私のイメージを、私自身が否定することは、いけないことだったのですか?

薄暗い部屋の中で、私は自分自身がどれほどダメな人間だろうか、考えることが多くなりました。

私は、親のイメージ通りの人間になる自信なんかなかった。

Sさんも、そうだったのでしょうか。


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