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L3 killing of genius "H"  作者: 迫田啓伸
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主人公、カウンセラーから話を聞き続けている

 ④こうなる前に、なんとかならなかったのか。


A「これは難しいな。大体、Hは真面目ないい子だったわけだ。不良みたいな子ではないわけだか

 ら、悪いことをしてストレス解消ということもできない。親からのプレッシャーを感じながら

 も、親の期待を応えようと頑張るタイプだろう。そんな子供を見て、親は心配に思うだろう

 か。下手すれば気づかないかもしれない。成績を上げようと頑張っている、としか見えないか

 もしれない。そんな中で子供は頑張る。悩み事を言えば親は心配する。成績が下がっても親が

 心配する。それでは、そういう子供にとって何が一番いい方法か」

L「何なの?」

A「何も言わない。面倒なことなら、そのまま黙っている。それが家族の幸せを守ることなのだと

 思うからだ。だから、日本全国の子供の何割かは、親と良好な関係を維持するため、家族の笑

 顔を守るため、何も言わないのじゃ」

S「でも、それでは」

A「そう、子供たちにいい影響は与えん。だが子供たちにすれば、特に真面目な子供はどうしてい

 いかわからない。問題を起こすこと事態、悪いことだとの思い込みを持っている。それだか

 ら、いい子は誰にも相談できずにいるのじゃ。Hは、そんな子供の心理状態が最も悪い形で現

 れたのかもしれんな」


 ⑤Hはいったい何がしたいのか。


L「何がしたいんだろう」

S「殺人とか」

L「それはそうかもしれないけど……だったら、日数なんか空けないで連日のようにやっていると

 思う」

S「そうか……」

A「こればかりは本人から聞かないとな。ただ」

S「なんです?」

A「Hの今までの経験から、Hが見ている世界はどんなものだろうか、と思ってな」

L「というと?」

A「考えてみてくれ。色々なメディアで今では世界中のことが情報として知ることができる。だ

 が、自分自身が実際に経験することは全て自分の身の周りでのことだろう。前者を『情報によ

 る知識』後者を『実体験での知覚』となるのだ。この二つがバランスよく交わりあって、世界

 がどういうものか感じることができる。個人差はあるが、その時の世界の見え方がどうか」

L「それだと、実体験が優先されがちだよね」

A「そう。自分のことで手一杯となれば、会ったことのない人、行ったことのない場所でのことま

 で気が回らない」

S「あの、それがHとどう……」

L「私わかってきた。Hは通り魔の心理状態になっているのね」

A「うむ」

L「どんな事情があるにせよ、HもSもやっていることは通り魔と変わらないのよ。殺人件数が多

 いということ以外」

A「これも仮説で、しかもHに心神喪失状態にないということにして考えておるから、あてにはな

 らんが」

S「……?」

A「殺人を犯すまでの人の心に与える影響は大きくてな。例え、それがまともな人間であっても、

 周囲の色々な要因によって影響を受けていく。今回のHの場合、それまでの生活環境によって

 ストレスや挫折体験などを受け続け、蓄積していったストレスが人格変化にまで悪影響を及ぼ

 した」

L「今まで体験してきたことから、自分を取り巻いている世界がHには、ひどく醜く見えていたの

 かも。もしかして、Hが敵と考えているのは今までHに関わった人ではなく、関わった人たち

 を透して見えていた世界そのものなのかも」

A「やはり、そう思うか。大体通り魔というものは社会に対して強い憎しみや疎外感を抱いている

 ことが多いからな」



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