作者と主人公、カウンセラーと会う-4
② SはHにどんな影響を与えたか。
L「HはSの人質だったんだけど、HはSに好印象を持っていた。いわゆる『ストックホルム症候群』という奴かな?」
A「その仮説は、おそらく正しい」
S「なんです、その『ストックホルム症候群』って」
L「迫田君、ようやく口を挟んでくれたね」
A「まあいい。説明するから聞いていたまえ」
1973年、スウェーデンのストックホルムで銀行強盗事件が起きた。犯人たちは人質を取って一週間立てこもった。人質は無事に解放された。しかし人質たちは犯人を庇うような証言を始めた。さらに警察を非難するコメントも出したという。
そして驚いたことに、人質の一人が犯人の一人と結婚までしているのだ。
このように、被害者が加害者に対し好意的な感情を持つといった、犯罪の現場でしばしば起こる心理状態。誘拐やハイジャックなど、長時間の監禁状態にある場合に起こりやすいらしい。
A「SがHを人質に取り、コンビニに立てこもった事件はまさにうってつけではないか」
S「確かに」
A「さらに、二人きりでいたわけだろう」
L「うん。結構仲良くやっていたみたい。H自身の証言だけど」
A「わしの仮説だが、SとHの相性が良かったのじゃろう……、おそらく彼らは赤い糸でつながっ
ている運命の二人であるかのごとく、恋に落ちてしまったのかもしれんな」
L「そんなドラマチックに言わなくても」
A「だから、仮説だと言っておるだろう!」
L「でも、50過ぎのおじさんには合わない台詞だね」
A「余計なことは言わんでよろしい」
L「では、どうして、ただのニートだったHが、いきなりSみたいに強くなったの?」
S「本当に才能を受け継いだとか?」
A「それはない。だが、そうかもしれんとしか、言いようがないな。人間がある日突然強くなるは
ずないからな」
アンデルセンが大きく息をついた。
「ちょっと休もう。紅茶でも入れるから、待っていなさい」




