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L3 killing of genius "H"  作者: 迫田啓伸
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H、逃走中

 警察署から逃げ出して、何日になったでしょうか。

 早速、私は指名手配にされ、ポスターもあちらこちらで見られるようになりました。

 私が婦警の格好をして逃げたということもあり、街から女性警官の姿は消えてしまいました。

 不審者として警察に通報されないように、車は山道や田舎の人通りの少ない所に駐車していました。寝るのは当然、車の中。

 うっかりホテルに泊まって、警察に踏み込まれて逮捕ということがないように、です。

 困ったのは風呂です。

 まだ大丈夫だろうと思って一軒の風呂屋に入ろうとしたとき、その風呂屋の看板に私のポスターが貼ってありました。

『危険人物。見つけたら通報。絶対に近づかないように!』

という煽り文句と共に、メガネをかけ、前髪をたらしている無表情の私の顔のアップ。

 改めて見ると、私の不細工さ加減がよくわかります。

 私はとっさにその風呂屋から逃げ出していました。

 それまでは公園などにある水道を利用していたのですが、さすがにそれだと限界があります。

 梅雨時なので、雨に当たるということも出来ましたが、今だけです。

 本当に何日ぶりかのお風呂で、残念でしたが、見つかる危険は冒せません。

 ふと、その辺の家に忍び込み、風呂を無断拝借しようと考えました。

 もし見つかれば、家の人を殺してしまえばいい。

 しかし、これもダメでしょう。

 皆さん、私のニュースが毎日のように流れ、警戒していることでしょう。

 防犯センサーも普及し、一歩踏み込めば通報されるかもしれません。

 見つかればSさん以上の警察官に取り囲まれるかもしれません。

 いずれにしても危険です。

 Sさんのようにホームレスになりきるという手もあります。

 そうすれば風呂や寝る場所の心配もなくなります。容姿も大きく変貌し、見つかるリスクも低くなります。

 Sさんのすごいところは殺人鬼としてもそうですが、数ヶ月もの間にわたって福岡県内に潜伏し続けた。つまり、なりふり構わず逃げ続けられたという点だと思います。

 私にも出来ないことはないでしょう。

 でも、気持ちがあと一歩踏み切れません。

 この私にもSさんと同じくらいの才能はあると思います。

 が、その他の点ではSさんに及ばない……。

 以前、私は

「Sさんに出来ることは私にも出来る」

と、言ったことがあるのですが、できないことばかりです。

 私は思わず笑ってしまいました。

 ようやく私にも、人並み以上にできることがあったのに。でも、それは殺人という、社会からは絶対に容認されないことでした。



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