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L3 killing of genius "H"  作者: 迫田啓伸
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L、警察から報告を受ける

 里緒が宗像市役所で法律相談をしているときのことだった。

 とはいっても、午前中に二人の相談者が来ただけで、実に暇なものだった。

 本当なら、別の法律家に市役所での仕事を頼んで、自分はHの捜査を行いたいところなのだ。

 しかし、警察にも面目があるのだろうし、もし『越権行為だ』と突っ込まれたら面倒なことになるので、自重しているというわけだ。

「はぁ……」

 机に突っ伏し、ため息にも似たあくびをする。

 いつもなら何分かおきに相談者が来るものなのだが。

 電話がかかってきた。迎刑事からだ。

「もしもし」

「迎です。今大丈夫ですか?」

 里緒に断りを入れてから、迎はHによる殺人が起こったと告げた。

 里緒は一気に目が覚めた。

 詳細だが、三時間前に福岡県○○市のとある住宅地で一人の老人男性が殺害された。

 直接の死因は頭蓋骨陥没による脳挫傷。顔や胸部、腹部にも打撲の跡があった。

 さらに財布から金が抜き取られていた。その財布と服からHの指紋が検出されたのだった。

 この強盗殺人で、Hによる被害者はこれで十八人目。

「目撃情報は?」

「あります。近くの主婦からの通報で事件が発覚。急ブレーキの後、老人の怒鳴り声が聞こえ、その後に若い女性が怒鳴り返したということでした。ただの喧嘩かと思っていたら、突如女性が暴行。主婦はそのときすぐに通報していたそうです。警察が到着したときには、女性は既に逃走。鑑識の結果から、女性がHであると断定しました」

「なるほど。その時のHの服装と、車に乗っていなかった?」

「はい、不審な黒いワンボックスが走り去ったと。Hの服装ですが、まだ不明です」

「なぜ?」

「事件現場を直接見ている人がいなかったのです。通報した主婦も、話し声と音で判断したのです。それから、近くに防犯カメラがなかったのです」

「そう。ちなみに聞くけど、現場で見慣れない婦警が歩いていたとか? だってHは婦警の格好で逃げたし」

「ありません」

「それでは、稲垣刑事にも言ったことだけど、Hが逃げた当日に死んだ五人組の乗っていた車は?」

「五人とも全て調べました。しかし、今回の事件での黒いワンボックスの所有者はいません」

「じゃ、社用車……レンタカーかもしれない。社用車がなくなったとか、レンタカーが戻ってないとか、そういう被害届は」

「調査中です。ですが、ひとつ判ったことがあります。永野健一を初めとした男性四人は闇金業者で、女性……有村由美子は風俗嬢で多重債務者でした。永野らからも借金がありました」

「じゃあ、男四人は女一人を捕まえ、軟禁していたかもしれないね。そして夜道を車で、有村をタコ部屋か何かに連行していたのかも」

「そこをHと遭遇して」

「成人五人が乗るのなら、ワンボックスだったらちょうどいいし。闇金が違法なことをしていたのなら、車を盗まれても警察に届け出ないでしょう」

「なんとしてもその車を割り出し、せめてナンバーだけでも」

「それから、Hをレイプしようとしていて返り討ちにあった連中の生き残り。まだいるでしょう?」

「彼は今井刑事と一緒に、警察病院に入院しています」

「彼らにHの似顔絵を描いてもらって。免許証じゃ時間が経っているので容貌が変わっているかもしれない」

「そうでしょうか?」

「Hは引きこもりだった。引きこもっているうちに顔が少し変わったのかもしれないし、写真写りの良し悪しもあると思うの。ところで、Hの免許証の更新期限はいつ?」

「確か、来年の十二月。ゴールドカードでした」

「だったらなおさら。四年近くも引きこもっていたら、顔が変わるのも当然よ」

「後は服装ですね。どこかから盗んだかもしれない」

「そうかも」

「それでは、自分はこれで」



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