再び、H回想を始める-2
私はアクセルを強く踏んでいることに、気がつきませんでした。
それにより、スピードが上がり続けていることにも。
「Hさん。ちょっと、お釣りの間違いが多いよ」
「すみません」
「それはそうと、店の倉庫から商品を持ち出す奴がいるんだけど」
「私じゃありません!」
「今度やったら、クビだからね」
そのスーパーは有名なデパートの系列の店でした。
当然本社から派遣される正社員の人たちです。店長も本社の雇われの人。
私に釘を刺してきた人も、そういった人でした。
私は持ち出しなんかしていません。
しかし、冷たく宣告され、それでお終い。
私だけが遅くまで残されていました。
高校生のバイトとかいたので、早く帰さなければいけないという事情は分かりますが……。
どうせ、私には持ち出しの容疑がかかっていたのでしょう?
だったら、私を首にして別の人に頼めばいいのです。
スーパーでの回想は終わり、別の場面が出てきました。
学校でした。
私はアクセルを戻していました。
スピードは徐々に落ち始めました。今、私は両目で前方を見つめ、何かを思い出している状態でした。
私は、学校ではいつも一人でいました。
Sさんもそうだと言っていましたが、そのほうが落ち着くからです。
一人でいたいから、一人でいるだけなのです。
しかし、周囲の人はそうは考えないようです。
毎日のように、私の周りで陰口が叩かれていました。
「あの子、誰?」
「Hって言ってたよ」
「いつも一人だけど、どうしたの?」
「へんな子だから、関わらないほうがいいよ。いつも一人だし」
「なんだか、ネクラそうだしね」
「がり勉だって聞いたよ」
「なんだか、エロい本ばかり読んでそう」
「隠れて結構やっているんじゃないの?」
「やめようよ、みんな仲間じゃない」
物好きな生徒が何人か私に話しかけてきたことがありますが、その一回きりということが多かった気がします。
途中、セルフサービスのガソリンスタンドに寄り、給油しました。
デパートに入ってから、まだ数時間といったところ。
ガソリンの残量が不安になってきたわけではないのですが、これからどれくらい逃げるか分からない。
それに、私の手配書が他のガソリンスタンドまで回っているかもしれない。
デパートで、ポリタンクを二つ買っておいたのが良かった。
これにガソリンの予備を入れておけば、当分は持つはずです。




