里緒の調査-1
Hの母親から里緒に連絡があった。
Hの両親がそろって里緒に会うということになった。
その日の昼過ぎ。
里緒は電車を乗り継ぎ、Hの家に行った。
その地区の家としては現代的で、敷地も大きかった。
壁がいたんでいるので建築年数がかなりのものだと分かるが、それでも、普通のサラリーマンが建てたものの中では立派なものだった。
Hの父親はリストラされたとはいえ、以前は信金に勤めていた。
結構いい収入だったのだろう。
その父親だが、毛が薄く中肉中背、下手すればその辺のしょぼくれた親父たちと変わらなかった。年の割には白髪が多く、しわも目立っていた。
「先生、どうも」
Hの父は里緒と会ってすぐ、頭を下げてきた。
Hの件で疲れきっているのかな、と里緒は推測した。
ちなみに、今は運送会社に勤めているそうだ。
Hの子供時代の話だが、これまで聞いたような話しか出てこなかった。
小学生までHの成績はよく、先生からの評判も良かった。
そのおかげで色々と委員などをしていたそうだ。
子供時代の話は、Hの両親はどことなく誇らしげに話していた。
それから中学で成績が落ち始めたこと。
リストラで収入が激減し、Hを大学にやれなかったこと。
引きこもったことから、Sの人質になったことまで。
両親は切々と語った。だが、里緒にとって、それらは全て知っていることだった。
話を聞いている最中、里緒は部屋の中を見回していた。
家具やインテリアなどが、自然と部屋になじんでいるように見えた。
長い間使い込んでいるかのようなかすかな汚れはあるものの、ほこりの付着はなく、手入れは行き届いている。カーテンやじゅうたんも、それなりにきれいで清潔感がある。
家電品にも目を配る。決して高価なものはないが、いい品がそろっていた。
リストラされる前は貯蓄に余裕があったようだ。
話が終ると、里緒が切り出した。




