H、回想を始める-3
訳あって投稿から離れていましたが、再び投稿することにしました。
やはり、さぼると駄目ですね。明日しよう、またこの次しようと次々と先延ばしになってしまう。
これからはそんなことがないようにします。
車はシャッター商店街を通り過ぎました。
まだ昼を少し過ぎたばかり。
普通の人たちは学校や仕事に出ている時間なので、商店街に足を運ぶ人は少ないのでしょう。
とはいえ、この辺はあまり景気がよさそうではありません。
私は一軒のデパートを見つけました。博多や小倉にあるような大きなデパートではなく、せいぜい三階建ての、老朽化したペンシルビルを無理矢理デパートにしたような、こじんまりとしたものでした。
営業中。
私は駐車場に車を止め、デパートに入ることにしました。
リノリウムの床はきれいに掃除されていました。中は天井の高い二階建てで、一階は食品、二階は衣料品売り場でした。
警察は、私が婦警の制服を奪ったことがわかっているでしょう。
それに、着替えも昨日の雨でぬれてしまいました。よく風邪を引かなかったものです。
「は……」
私は足を止めました。
夏物のリクルートスーツが売られていました。
そういえばもう六月。
大学生であるなら、就職活動も佳境に入っている時期はないでしょうか。
知らず知らずのうちにスーツを手に取っていました。
もし、私が大学にいけていたら……少なくとも、高卒で仕事がない状態にはならなかったでしょう。
頭がかすかに痛みました。
「ねえ、H。お父さんの信金、吸収合併されそうなの」
高三の夏、母が私にこう切り出してきました。
そのとき、私は大学受験のため勉強していたのです。さすがに、姉に比べ成績のいいほうではないので、いける大学も限られていますが。
夏休みであるにもかかわらず、高校はわずかばかりの盆休みをはさんだだけで、夏休み返上で補習授業を行っていました。当然、全員参加です。
当然、私も進学するのだと思っていたのです。
母の話は続きました。
「だから、言いにくいけれど、高校出たら働いてくれない?」
寝耳に水とはまさにこのこと。
いきなり言われて、何の言葉も思いつかなかった。
かろうじて
「えっ? じゃ、大学は?」
と、聞くのが精一杯の私に、母はため息をつき、私の目を見て言いにくそうに、首を振りました。
私はこれまで、受験勉強を……まぁ、人並みには……してきたのです。学校でも、大学への進学希望が多くて、専門学校や就職という進路を取る生徒はあまりいませんでした。




