作者、テープリライターを続けてしまう-7
その後も女性はHと話したが、この時ほど言葉を交わすことはなかった。
里緒の質問は続く。
当時、Hがこのような殺人犯になることは予測……。
「まさか。確かに暗い性格で、一人でいることが多くて、クラスからは変人扱いされていましたが、Hは基本的にいい人でした。それに、運動がダメで、警察の人を殴り倒すことなんて、とても無理です。高校卒業後、何があったか知らないけど」
Hの変貌には、Sが関わっていると思いますか?
「そうですね、それしか考えられません」
進学を断念したことはどうです?
「……、うーん。少しは関係あるかも」
他には何か。
「そうですね。クラスの大半から馬鹿にされていた……いや、無視されていたようです。成績はいいし、そんなに悪い人ではなかったけど、会話とかヘタだし暗い性格だったので」
同級生たちからの聞き込みのMDはこれで終わった。
そのMDを取り出すと、里緒が別のMDを取り出し、俺の前に投げた。
「こっちは?」
「こっちのはHの先生の聞き込み。聞いてみて」
言われるままに、俺はMDを再生した。
一人目は男性で、高校三年のときの担任だった。
Hは学校では、どんな生徒でした?
「Hのことはよく覚えています。なんと言うか、典型的な真面目でおとなしい生徒でした。人付き合いが悪く、無口な所が気になりましたが、スーパーのレジのバイトで声を出しているのを見て、安心したことがあります。学生時代は、友達と何かするといったことはないようでした。係の仕事を頼んでおくと、忘れずにやっておいてくれるので、助かりました」
同級生の話を聞くと、存在感のない生徒みたいでしたが?
「そんなことはなかったと思います。少なくとも、自分のクラスでは違います。先ほど無口だといいましたが、ちゃんと挨拶はするし、口下手ではありましたが」
Hは大学進学を希望していたようですが。
「ええ、そうです。確か、夏の進路希望では大学進学希望でした。三者面談ではHの母親が来まして、はっきりと進学を希望されました。Hの偏差値では無理な大学でしたが」
Hの成績はどうだったのですか?
「学内では良い方でした。ですが、Hの母親が希望している大学には偏差値が届いていない。そこで、私のほうでもとある大学を滑り止め代わりに勧めたわけです。ですが、母親は……」




