作者、テープリライターを続けてしまう-4
「……と、こういう人なんだけど、Hに関して、何か覚えていることない?」
「とは言ってもなぁ。今までこいつの存在忘れていたからな。ちょっと待って」
証言者の男Aは携帯に出て、何かを話していた。
ここでMDは一時中断。
男Aと里緒が会話する所から始まった。
「すいません、ちょっとバイト先から」
いいですよ。
ところでHという人物は、どんな人で?
「どんな人と言われても、覚えていないんですよ。話したこともないし、クラスで全く目立たなかった……いや、そういえば、テストが返って来る時に名前を呼ばれたことがある」
覚えていませんか?
「そういえば、成績優秀者ということで呼ばれていたかな」
Hが学校で事件を起こしたとかは?
「ないない。俺なんか喫煙で停学になっちゃってさ。はっはっは」
二人目、三人目、四人目とHの証言は続くが、第一声は
「その人は誰だ?」
とか、それに近い言い回しだった。
写真を見せても、それほどの反応はなかった。中には
「ブスだなぁ」
と、答えるひどい奴までいた。
MDを聞いていくうちに、俺でも『Hがクラスでも存在感のない存在だった』ことがわかってきた。
三人目、四人目の証言でもそれが確信付けられた。
成果が上げられないまま五人目の聞き込みとなった。
里緒が写真を見せると、五人目の男は明るい声で
「ああ、思い出した。同じ中学にいた奴だ」




