作者、テープリライターを続けてしまう-3
「怖いですよ。自分で志願し、訓練を受けたとはいえ、我々も生身の人間です。死にたくはありません。ですが、誰かがやらなければいけないし、それが警察の役目です。もちろん、Hも必ず捕まえます。また、あのSと戦う事になるのか、と憂鬱ですが。ところで氷高先生」
なんでしょう?
「暴れている酔っ払いを取り押さえるのに、我々警察はどうすると思いますか?」
どうするんですか?
「十人以上で一斉に飛び掛るんです。それが一番安全な方法だからです。攻撃に移るとき、我々は覚悟を決めるのです。そうしないと、怖くて動けなくなることもあるからです」
なるほど。
「制服を着用しているときは、色々と装備していますから恐怖はそれほどありません。が、それでも相手が武器を持っていたりすると、一、二秒体が動かなくなることもあります。SやHみたいなのが相手だとなおさらです」
なるほど。
「私見ですが、あの時、Sの人質となったHはやたらと落ち着いていました。Sの死に際しても一人だけ悲しんでいました。Hには元々あのような資質があったのだと思います」
ありがとうございます。
MDが終った。
なるほど、テレビで見るよりもSは恐ろしい人物だったらしい。
実際に相対したSAT隊員がこう証言しているのだ。
その場の雰囲気とか、S本人から発せられる気配とかが違っているようだ。
次に聞いた同級生のHの証言。
同級生といっても、小学校、中学、高校と色々な人がいた。
里緒はHの両親から借りた卒業アルバムの中から、連絡先の特定できた者を選別したそうだ。
そして、MDの最初の一言が
「その人誰?」
だった。
と言うのも、里緒によれば最初の一人目、男Aはろくにニュースも見ないフリーターだったらしい。
そんな彼に里緒は新聞を見せ、警察から借りてきた免許の写真のコピーを見せて、説明した。




