作者、テープリライターを続けてしまう-2
MDが再生される。
隊員はまだ若い二十代男性。未婚。
迎刑事が仲介して、Sの最後の瞬間のことを話してくれることとなった。
これも、里緒がインタビュー形式で質問しながら、進められていた。
「あの時、自分はコンビニから三十メートルほど離れた位置で、隊列の右寄りにいました。Sが立てこもってから、かなり時間が経っていました。自分たちは緊張を切らすまいとしていましたが、中には疲れを隠せない隊員もいました。整列し、銃を携帯し、中の様子を外から伺うのは大変でした」
休憩はなかったのですか?
「ありません。Sが逃げないために、コンビニを取り囲んでいました。Sなら、隙を見せたらたった一人でも脱出を試みるでしょう。途中で死ぬことになってもSAT隊員に殉職者が出たかもしれません。ですからSAT総出でコンビニを包囲していたのです」
Sが出てきたときは?
「さすがに緊張しました。我々は一斉に銃を構えましたが、人質がSの前を歩いていたため、狙いを外したら大変なことになります。私は引き金に指をかけ、いつでも撃てる体勢をとっていました」
あの時Sは銃を捨てました。
それで少しは安心したのでは?
「確かに。しかし、Sは世間では銃による殺害が多いと思われていますが、実際にその通りなのですが、銃殺の次に多いのが素手または鈍器による撲殺です。ですから、銃を捨てたとしても、Sなら素手で襲い掛かってきたかもしれないと……」
それなら、そのときに銃で撃ち殺せば。
「……信じてもらえるか分かりませんが、県警では『Sの体を銃弾が避けた』と言われていました。ヤクザとの争いや宗像事件の際の警察の追跡を逃れられたのも、Sの持つ神がかり的な何かだとも言われています。ですから、SATがあの時一斉射撃を行っても、Sには一発もあたらず、我々が逆に殴り倒されていた可能性もあります」
HはSに出来ることは自分にも出来る、と言っていました。
Sの素手による強さはどれくらいなのですか?
「Sは少林寺拳法の師範を素手で殺した実績があります。それにSの持っていた銃『S&W M500』はよほどの訓練をしないと扱えません。素人が使えば銃の反動で肩が抜けたり、手首が壊れたりします。後は、想像にお任せします」
最後に、Sの彼女を名乗る馬鹿女、Hのことをどうお考えですか?
また、怖くはありませんか?




