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Sの回想をHが語る-3
「終りました!」
「うむ」
銃撃が終ったとき、一人の隊員が見知らぬ男に敬礼しながら話しかけていました。
男は40近くの、筋肉質ながらも、のっぺりとした印象。おとなしい感じの男でした。
とても人の上に立つような感じではなかったのです。
周りから歓声が上がりました。
「どうして?」
Sさんは確かに、許されないことをしたのかもしれません。
でも、人が死んだのに、喜ぶのですか?
あの人の言い分も、何も聞かないままで。
「大丈夫ですか?」
男が、私に手を差し伸べてくる。私は、差し出された手を見つめ、それっきりでした。
男の名前は田中といい、刑事でした。
どうして、Sさんを撃ったのです?
理解できません。私は泣きました。Sさんは、許されてはいけない。それほどのことをしたのです。でも、言い分も聞かないまま……。




