表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
L3 killing of genius "H"  作者: 迫田啓伸
28/345

H逃走-3

「もしもし」

 どうした?

「交通事故です。確か……から山道に入り、筑豊山地に向かって南下していたところですね」

 Hだな? 戸口巡査はどうした?

「それが、シートベルトが外れてしまいまして。戸口さんは、えっと、説明しないほうがいいかもしれませんね」

 H、貴様の位置は特定した! 捕まえてやる!

「これはうかつでした。でもSさんは、宗像事件のとき、逃げ出しましたよ。S君から才能を譲ってもらった私が、逃げきれないわけが無いでしょう? それでは、私はこの辺で」

 待て! H!

 既に止まっているエンジンのキーを回し、offにしてから鍵を引き抜いた。

 死ぬとは考えていなかった。

 Sがヤクザ事務所に乗り込んだときも、自分が死ぬとは考えなかったかのように。これは推測ではなく、S本人から聞いた。

 小脇に自分の服を抱えているが、警察官の姿というのは意外と目立つ。どこかで新しい服を調達したい。動かなくなったミニパトを後に、道なりに歩き出した。

 そういえば、昨日逮捕されたときに持ち物を全て没収されたのだった。今頃それを思い出し、持ってくるべきだったと後悔した。

 財布には多少の金と保険証、親の引き出しから取ってきた自分のキャッシュカードも入っていた。

 よく考えれば、カードを使えば自分の居場所が警察にわかってしまう。

 携帯電話も同じ。それほど上等な物ではないけれど。

 改めて、自分の姿を見る。山道を徒歩で歩く女性警官。

 慌てて森の中に入る。不自然にも程があるというものだ。あのまま歩いていたら、すぐに捕まってしまう。

 Sのように、うまくいかないようだ。

 森の中は薄暗かった。

 雨にぬれるし、足元もぬかるんで歩きにくい。外からエンジン音が聞こえてくると、思わず身を低くし、茂みに隠れてしまう。聞こえてきたエンジン音の正体が一般の乗用車だとわかるまで、安心できない。


 どこまで歩いたかわからないが、雨は止んだようだ。

 しかし森の中は霧が立ち込め、皮膚に湿り気がまとわりつく。

 冷たいし、不快だ。

 おまけに視界も悪い。歩きにくくて、その分体力も削られる。

 それでも、進んでいくうちに『逃げられる』という確信めいたものは強くなっていく。Sは、これよりも大勢の警察の囲まれても、逃げおおせることができた。

 もし、これが気のせいでなく、本当にSの才能が自分に譲渡されたのなら、必ず逃げ切れる! そして、胸のうちに溜め込んでおいたものを全て吐き出し『敵』を倒しに行くことができる。例え勝てなくとも、思い知らせることぐらいできる。

 そのためにも、こんな場所で逮捕されるわけには行かない。

「それにしても、寒いなぁ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ