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L3 killing of genius "H"  作者: 迫田啓伸
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里緒、これからのことを話す

 帰り道では、既に日が沈みかけていた。

 珍しい梅雨の晴れ間だが、あしたからまた雨になるそうだ。

 だが、もうすぐ夏になる。梅雨が明けるのも時間の問題であった。

「迫田君、君は誰かを殺したいとかと思ったことはあるかな?」

「あるけど」

「無いと言って欲しかったな……。いやなことがあってむしゃくしゃして、何かに当たりたいと思ったことは?」

「あるけど」

「皆そうだよね」

 里緒はずっと前を向き、ボソボソと呟くように話しかけてくる。俺は彼女の少し前を歩いていたが、時々振り返り、足を止めながら進む。

「何か辛いことがあっても、そのせいにして悪いことしちゃいけないよね。もし、心が辛くてつい犯罪行為に及んで、それが許されるようになれば、この国は犯罪大国になってしまうよ」

「その通りだな。ところで、何かわかってきた?」

「少しね。明日、今日のことを警察に話しに行こうと思うの。警察の捜査も進んでいるだろうけど、Hの人物像が少しでもわかれば手がかりになるんじゃないかな」

「なるほど」

「迫田君。悪いけど、しばらく留守にするから」

「捜査に参加するため?」

「そうなるかもしれないけど、それより先に会っておきたい人が一人残っているから」

「それは?」

「Hの姉。福岡県の端のほうにいるから、移動に時間がかかるかも」

「今までの話で十分じゃないの?」

「ううん、今まで聞けなかった話か聞けるかもしれない。今までの証言の裏づけという意味合いもある。それに、姉妹という違いだけでHとHの姉は生活環境が似ているもの。ただ、成長した姿が正反対というだけで。意外といい話が聞けるかも。Hの資質とかHがおかしくなりそうだったこととか」

「あまり期待しないほうがいいよ」


 あまり期待しないほうがいい。

 俺のこの忠告が里緒に聞こえたかどうかはわからないが、とにかく里緒は出かけてしまった。

 福岡県内のあまり聞いたことのないところだから、ちょっとした出張みたいになるだろう。


 里緒が部屋を留守にした翌日。県内のとある山中で男性の焼死体が見つかった。

 警察の発表では、体全体に強い打撲が加えられた後、火を放たれたということだ。

 現場に残った足跡や指紋、毛髪などからHによる犯行だと断定された。

 これでHによる殺人は19人目。

 それでも、里緒が帰ってくるのは遅かった。


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