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L3 killing of genius "H"  作者: 迫田啓伸
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H、火を放つ

「そ、そんな、助けて、助けて、死にたくない」

「うるさい! 大体、お前が強請りなどしなければ、こんなことにならなかったと、そう思わないか! お前の普段の態度が原因じゃないか!」

 私は男を持ち上げ、アスファルトに叩きつけました。

 ぐぅ、と悲鳴と共に男はうつぶせに倒れました。

 二度目はズボンに手をかけ、反対側に投げ飛ばします。

 すると男は背中から落ちました。

 口を大きくあけ「あーっ!」とよく通る声を出しました。

 のた打ち回る男を尻目に、私は車に戻りました。

 ポリタンクに入れておいた予備のガソリンと、先ほど男から取り上げたライターを持って、男の元に戻りました。

 男の目が私を見上げていました。

「なかなか体が丈夫なんですね」

 私はガソリンを男の体に撒きました。

 そして、先ほど脱がした男の上着にライターで火をつけたとき、男の顔色が変わりました。

「人はいつか死ぬのです。それが早いか遅いかという違いだけです。どうでした? 楽しい人生だったでしょう? 自分の思い通りに生きられて」

「いやだ、やめてくれ。死にたくない。助けてください」

「諦めてください。ふふっ……」


 私は、あれからすぐに車を出しました。

 男の財布から金を抜き取るのも忘れずに。

 ガソリンはポリタンクの半分を使っていました。

 もっと少なくてよかったのかもしれません。

 でも、もうあの男といっしょに燃えてしまいました。

 それにしても、もう夜更けです。

 時間をかけすぎました。

 Sさんなら、もっと速く殺すことができ、今頃、何十キロ先へと逃げていることでしょう。

 反省しなければなりません。

 Sさんは、その才能の全てを私に譲ってくれました。

 しかし、悲しきかな女の肉体では、Sさんのようにはいかなかったのです。

 私の行く場所は、ありません。

 Sさんも、私と同じ思いだったと思います。

 これから、どうすればいいんでしょう。

 どうやって生きていけばいいんでしょう。

 いっそのこと、殺人を繰り返し、射殺されましょうか。

 どうせ、私を受け容れてくれる人なんかいないのですから。


 ただ一人受け容れてくれた、Sさん、あなたは私の余計な言葉が原因で死んでしまいました。

 私は、どうしたらいいんですか?

 警察に自首でもしますか?

 自首してどうするんですか?

 それでは今までと同じではありませんか!

 またあの、わたし蔑んだ視線に囲まれて過ごすことになります。

 今度は犯罪者という肩書きがついてきます。

 その行き着く先は、Sさんと同じく『死』だけです。

 Sさんにコンビニで私が偉そうに語ったことは、私自身も実践できそうにありません。

 ……もう、考えるのはやめにしましょうか。

 いくら頭をひねって、ない知恵を搾り出しても、現状は好転しないのですから。

 世間では、私は極悪人の殺人鬼ということになっているでしょうし……。

 私は呟きました。

 それは、私が意図したこととは別の言葉でした。

「こんなんじゃ、全然、足りない……」


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