H、暴走……
「ヤクザがついているなら、刺青ぐらいしているだろ? どんなのか、見てやる!」
男の口から血と歯のカケラが飛ぶ。
倒れたと同時に男に襲い掛かり、シャツを引き裂く。
刺青はなかった。
「ヤクザじゃないのか! おい、なんで私を選んだ? 私がおとなしそうで、すぐに金を払いそうだからか! 聞いてるのか!そう思ったんだな! なめやがって!」
男の首がかすかに横に動く。
それが私の癇に障る。
「何だ、コラァ! まだ私に逆らう気か! お前のようなただの犯罪者ごときが、私に逆らえると思っているのか!」
男をうつぶせにし、右手を開かせてアスファルトに置く。
その指の一本をにぎり、力任せに、曲がらない方へと力を加える。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!」
残る指も同じようにねじり上げる。
そのたびに男は割れんばかりの大声で、悲鳴を上げた。
私は許す気にはなれなかった。
左手の指も、折るつもりでいた。
私やSさんが真面目に働いてもちっとも報われないのに、この男は罪を犯していながら、毎日楽しげに暮らしている。
ルックスも悪くないことから、交際相手もいるだろう。
何の苦労も知らないような奴が、私よりも幸せに暮らしているのが、気に入らない。
そう言う私も、苦労という苦労はしていないかもしれない。
くだらない。
実にくだらない理由で、私は暴力を振るっている。
そして既に何人か殺している。
しかし、過ぎたことは取り返せない。このまま気が触れたままで、生きるしかない。
左手の指を折る。また悲鳴が上がる。
「うるさい! 静かにしろ!」
「あああああっ!」
「男だろ! わめくな! お前の罰はこんなものじゃないぞ!」
ポキッ。




