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L3 killing of genius "H"  作者: 迫田啓伸
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H、回想を終える

 私の前に、Sさんがいた。

 Sさんの話を聞いた後、私はこう答えていた。

「そんなことで?」

 Sさんとコンビニで会話したことが、再生されている。

 物凄い勢いで、私の記憶が巻き戻され、私の言葉が強調される。

「Sさん、なに他人事みたいに言っているんですか?」

「どうして、自分からやろうとしなかったんですか? たとえば、野球だって『やりたい』と粘り強く言い続ければできたかもしれないのに」

「どうして、そんな自分の人生を投げ捨てるようなことをしたんですか?」

「どうしてこんなことをしたのか、説明する義務はあると」

「でも、言わないとダメです。Sさんが何を考え、どんなことがきっかけになって、何を思って犯罪を起こしてしまったのかを皆に話してください。納得する、しないではなく、話すことが大切なんです」

「でも、一人って寂しくないですか?」

「それじゃ、Sさん。今私とこうして話していることも否定するんですか?」

「きっと死刑になるでしょうけど……その日まで生き続けるんですよ? 今まで辛いことばかりだと思うけど、最後の日まで普通に生きてもいいと思います。どうにもできないことだけど、今から最後の瞬間まで、普通の人間として」


 私のフラッシュバックが終った。

 男は立ち上がっていた。

 私が長いと感じていたものは、それはおそらく瞬きほどの時間でしかなかった。

 でも、ひとつわかったことがある。

 あの時、私がSさんに放った言葉の数々は、私自身が言われたくないことだった。

 そんな上辺だけの言葉は聞き飽きた。

 でも、そのような言葉を私はSさんに投げかけた。

 Sさんが最後、あのような自殺まがいの死に方をしたのは、私の言葉がひとつのきっかけになったのかもしれません。

 もし、今の私が同じことを言われたとしましょう。

 言葉は私の心を上滑りし、私には何も響かなかったのに違いない。

 少なくとも、あのときに私がSさんに言うべきことではなかった。

 私が言い放ったのは、私が嫌いな誤魔化し。

 あれでSさんが私を殺さんばかりに怒り狂っても、仕方がなかった。

 私は馬鹿だ。

 Sさんに話した言葉は、ただの実現不可能なきれいごとだった。

 そして、口にした私自身が言葉通りに生きていない。


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