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L3 killing of genius "H"  作者: 迫田啓伸
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H、反撃に出る

 私はとある山中にたどり着いた。

 男を車から降ろす。

 男の体が、アスファルトに落ちる。

 鈍い音と同時に男が悲鳴を上げた。

「な、なんや?」

 男が目を覚ます。

 私は答えない。

 男は私を見つけ、食って掛かる。

「コラァ、何すんじゃあ!」

「うるさい!」

 手錠を握り込んだままの手で、男の頭を殴る。

「お前! 私がめがねを壊したといっただろう!」

「そうやないか!」

「ふざけないで! そのめがねは最初から壊れていたんじゃないの! それで、私から金を取ろうとしたんだろうが!」

「何言うとるんや! なめたこというと、いてもうたるで!」

「なに!」

「なにってなんや! ブッコロスぞ、おお? われぇ!」

「私に向かって、殺すというか……」

 男の言葉が半ばおかしく聞こえた。


 男は本気で怒っているようだが、口先だけで、何もしようとしない。

 私は男の胸倉をつかみ、顔を引き寄せ、呟くように言った。

「お前のメガネ、特注品で、高かったそうだけど、私が持っていた市販のメガネと同じ値段だった。それがなぜ特注?」

「ケチつけるんか!」

「嘘をつくなと言っているんだ! お前が私を強請ろうとしているのはわかっていた!」

 私は男の鼻先に頭突きを食らわせ、髪をつかんでアスファルトに叩きつけた。

 そう、弱みをにぎれば、言いなりに出来る。

 不良とか優等生とか関係ない。

 いや、優等生のほうが、頭がいいだけ質が悪い。

 うまく隙を見つけ、言葉巧みに相手の心理を揺さぶり、細く長く相手を支配し、色々と要求する。

 私の学校では、学年一位の男がやっていた。

 先生たちも奴の普段からの態度に、強請りを行っていると疑わなかった。

 私はさらに男を怒鳴りつける。

「そうだろう! そのメガネは最初から壊れてたんだろ!」

「アホ言うな! お前が壊したんや!」

「じゃあ、証拠を見せろ!」

「疑うか! 人の壊しといて、無責任なやっちゃのぉ!」

「貴様……」

 手錠を握り締めたまま、男の顔を殴った。

 手錠が男の鼻先に食い込む。男はアスファルトに転がった。

 私は男の上に覆いかぶさるように、奴を確保した。

 右手で男の腕を押さえ、左手を振り上げる。

 このとき、視界が暗転した。

 Sさんを悩ませていたフラッシュバックが、私にも起こり始めていた。


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