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20話 『先生の思い』


 やっぱり……


 事実であったことを知り、リアは動揺を隠せなかった。そんなリアの様子を見たミドウは、リアへと近づきながら言葉をかけてきた。


「リア君、君は儂を憧れにしてくれている。イーナからそう聞いているよ。ここに来てくれて、ありがとうな」


「!? そんな? どうしてミドウさんにお礼をいわれるんですか?」


「君達は儂らにとって宝物に違いない。それはおそらく、イーナや他の先生達にとっても同じ……」


「そんな大層な存在なんかじゃないです! それに、僕よりもっと優秀な人がいるのはわかっていますし……」


「そうか、アルフレッドのこと、君は気になっているんだな? そして…… 本当はリア君、もう一つ君がもやもやしている理由を当てて見せようか? 本当は君は儂の班に来たかったのではないか?」


 唐突に、リアの内心を言い当ててきたミドウ。心を読まれているのではないかとどきっとしたリアは何も言葉を返せなかった。


 イーナ先生には、この学園に推薦してもらったし、何よりずっと面倒を見てもらっているし、すごく感謝している。でも、心の何処かでやっぱりミドウさんの班に所属したかったと思っていたことは間違いない。


「はっはっは、そんな事イーナの前で言ってやるなよ。あいつも結構気にしいなところがあるからな!」


 豪快に笑うミドウ。リアはもう愛想笑いを浮かべるのが精一杯だった。


「……本当は一教師として、こんなことを生徒に言うべきではないのかも知れないがな…… まあここからは儂の独り言だと思って聞き流してくれ」


 そして、ミドウは、確実にリアに向けての独り言を語り始めた。


「実はなあ、ある先生からどうしても自分に面倒を見させて欲しい生徒がいると頼まれてしまってな。まあその先生には、学年の担任の業務やらなんやら、普段からいろいろと頼ってしまっている手前、儂も無下には出来なかったんだよ」


「それって……」


 まさかとは思っていたが、自分とソールが同じ班に所属されたのも…… そんな運命みたいな事があるんだろうかと、少し気になってはいたが……


「今の零番隊の軸は儂らではない。確実に若い者達…… そう、例えばミズチやルート、ヨツハ、それに君の担任になっているイーナ。間違いなく、彼らの存在で零番隊は持っているだろうし、儂よりもずっと実力も高いだろう。」


 リアはミドウの言葉が信じられなかった。言葉は悪いかもしれないが、零番隊の壱の座、つまりトップであるはずのミドウよりも、席次が下である参の座のミズチや、肆の座のヨツハ、それに伍の座の先生、陸の座のルートの方が実力が上というのが理解できなかったのだ。


「それはどういうことなんですか?」


「その言葉の意味の通りだ。特にミズチとイーナ。あやつら2人は今の零番隊、いやこの国の討魔師達の中でも、トップの2人であると言っても過言ではない。リア、君もイーナにこてんぱんにされたのではないか?」


 文字通り、手も足も出なかった。あのときの事を思い出しながらリアは小さく頷いた。


「そうだろうな、そう簡単にやられてしまっては、零番隊の立つ瀬もないしな! はっはっは! あっ…… まあ儂が言うことではないか……」


「……一つ聞いても良いですか?」


「なんだリア君?」


「……言葉が難しいんですけど、変な意味ではなくて…… ミドウさんの言葉通り、どうしてミズチ先生やイーナ先生の方が強いのに、零番隊の席次は下なのかな……って?」


 リアの言葉に豪快に笑い出すミドウ。まずいことでも聞いてしまったのかと動揺するリアに、ミドウは笑みを浮かべながら言葉を返す。


「まあそこは色々あるんだ。大人の事情って奴だな! リア君きっと君もいつかわかるさ! ただ一つだけ確実なのは、零番隊の討魔師達、彼らは間違いなく全員優秀な存在だ。そんな彼らが、直接教えてくれる機会なんてそうあるもんじゃない。君もぜひ、頑張ってくれよ! そろそろおしゃべりの時間も終わりだ。明日も早いだろう?」


 そのまま、ミドウは寮の方へと戻っていった。1人取り残されたリアは、ミドウが言っていた言葉を思い出す。イーナ先生が、僕を選んでくれたということ。わざわざ他の誰でもなく、この僕を選んでくれたんだ。


「うん!」


 気が付けば、リアの心の中でずっと引っかかっていた、もやもやは何処かへと消えていた。そう、ミドウにさえ、トップクラスの討魔師であると認められているイーナが、自分の先生になってくれたのだ。その期待を裏切るわけにはいかない。


 そして、意気揚々と部屋に戻っていたリア。


「……ふふ」


 そんなミドウとリアのやりとりをずっと、影から見守っていた女性は、1人静かに笑みを浮かべながらたたずんでいた。


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