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18話 『新しい友達』


「リア、いいなー! イーナ先生の所だろ~~! イーナ先生可愛いもんな~~!」


 食堂で夕食を取っていたリア。横でリアに話しかけてきたのはカシンという男。彼もリアと同じ、入学生の1人である。


 実習が終わってから、寮に戻ったリア。ちょうどリアの部屋の隣がカシンだったと言うわけで、夕食を一緒に食べようという話になったのだ。


「カシン、そっちは…… ルート先生だっけ?」


「そう! よく覚えてたな~~!」


 まだそこまでお互いのことを知らないにも関わらず、フレンドリーに話しかけてくるカシンは、リアにとってありがたい存在だった。まだこの学園に来てから、ソールと、同じ班となったルウしか知り合いがいなかったリアにとって初めての男友達。それがカシンである。


「それにしてもな~~ ほんと、化け物だったよ。手も足も出なかった。 なあヒルコ?」


「くっ…… 仕方ないだろう!! 相手は零番隊。これも計算の範囲内だ!」


 そして、もう1人、カシンと同じ第6班、ルートの班に所属するヒルコ。丸い眼鏡がトレードマークのヒルコは、ちょっと変わってるけど、悪い奴ではなさそうだ。


「こいつなんてさ~~ もう分析は完璧だとか言いながら、真っ先に先生にやられてやんの!」


「うるさいぞカシン! 貴様だってやられたのは同じだろうが!」


 眼鏡をくいっと中指で直しながら、語気を強めるヒルコ。まあ…… 彼らも彼らなりに上手くやっていけそうな感じだ。


「んで、そっちはどうだったんだよ、リア? イーナ先生は?」


「うん、ぼっこぼこだよ。次元が違った」


 あのときの演習。ルカと、そしてソールと一緒に鍛えた僕のオリジナルの魔法は全くイーナ先生には通用しなかった。それどころか、逆に僕達の魔法攻撃を利用されて完璧に力の差を見せつけられた。そして、あの柔らかな腕と温かい先生の感触……


 違う、違う! 一体何を考えているんだ僕は!


 戦いのことを思い出そうとしたリアだったが、思い出されるのはあのときの先生の息づかいや、先生に捕らえられたときの感触だった。煩悩を振り払おうと首を振り、違う方を向いたリア、ちょうど、ルウ達と一緒にご飯を食べていたソールと目が合う。


「おい、リアどうしたんだ、そんな顔を真っ赤にして、お前まさか…… ソールちゃんと……」


 完全にカシンに誤解されてしまったようだ。慌ててリアは取り繕うように言葉を返す。


「違うよ! ちょっと、戦いのことを思い出したら恥ずかしくなってきて!」


「ソールちゃんの目の前でボコボコにされたってか~~ 青春だね~~! お前そういえばソールちゃんとはどういう関係なんだ? 元々知り合いだったんだろ? ずいぶんと仲が良さそうだったしな!」


「ああ、ソールは僕の幼なじみなんだ。一緒にここを受験しようって、誘ってくれて! 別にカシンが考えているような関係ではないよ」


「おっ! てことは、俺にもチャンスがあるってわけか! ソールちゃん可愛いしな~~ ルウちゃんも可愛いし、本当にお前が羨ましいぜ! はあ~あ! 俺もかわいい女の子と同じ班がよかったなあ~~! チームメイトと言えばこいつと……」


「あ? だれが可愛くない女だって?」


 唐突にドスのきいた声がこだまする。一気に顔色が青ざめていくカシン。もう1人のチームメイト、ヒルコも動揺しているのは明らかだった。なにせ、頻繁に眼鏡を中指で直していた几帳面そうなヒルコが、眼鏡をずらしたまま固まっているのだ。


「いやいや! ねえファロンさん、違うんですよ! これはちょっとした言葉のあやというか……」


 取り繕うようそう口にしたカシンのスネを思いっきり蹴り上げた女生徒。途端悶絶するカシン。


「あんたリアだっけ…… あたしはファロン。悲しいかなこいつのチームメイトだ。これからよろしくな。それにしてもあんた、こんな馬鹿に付き合ってたら脳みそが溶けちまうよ。付き合う友達は選らんどきな」


 涙を目に浮かべながら固まったカシンと、すっかり怯えてしまったヒルコをよそに笑顔を浮かべながらリアに挨拶をしてきたファロン。ファロンはモンスター達の中でもとりわけ勇敢な、獅子の一族出身の女の子である。まあちょっと怖いところはあるのかも知れないが…… 今のは完全にカシンが悪いし、気にしないでおこう。


「……よろしくね、ファロン!」


 リアの挨拶にファロンは笑顔を浮かべ、そのまま持っていた夕食を手に、ソール達のテーブルへと歩いて行った。いつの間にか、ソールもルウや、その姉のスウ、それにファロンといった友達がたくさんできているようだ。


「……本当に怖いぜ…… 同じ女かよ」


「今のはカシンが悪いよ。どう考えても」


「全くだ」


「まあまあ…… おっ! アルフレッドのやつもきたようだぜ」


 カシンの言葉にぴくりと反応したリア。アルフレッド・ルシファーレン。リアの憧れであるミドウ率いる第一班所属の学生であり、おそらく僕達の代の中で一番零番隊に入る可能性が高い男であろう。


「すげえよな。父親は零番隊弐の座のアルトリウス・ルシファーレン。まさにエリートってやつだよな」


 そう、カシンが口にしたように、彼は現零番隊の1人、『弐の座』アルトリウス・ルシファーレンの息子であるのだ。おそらく先生達からの評価も一番高い生徒。それが彼だろう。


 夕食を受け取り、1人席へと座るアルフレッド。何とも近づきがたいオーラを放ったままのアルフレッドの様子をみたカシンは、リア達に向けて口を開く。


「あいつ、1人かよ。俺ちょっと話してくるわ」


「えっ…… カシン、アルフレッド君と知り合いなの?」


「いんや、知らない! だから話してみたいだろ!」


「ちょっ…… ちょっと待って!」


 リアの言葉も全く気にしない様子で、1人夕食を口にしていたアルフレッドに近づいていったカシン。リアもヒルコも動揺を隠せないまま、慌てて、カシンについていく。そして、カシンは臆することなく、1人黙々と夕食を食べていたアルフレッドへと語りかけた。


「おう、あんた、アルフレッド・ルシファーレンだろ?」



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