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17話 『先生!? それは、まずいですって!?』


「炎の術式……!」


 右腕にありったけの魔力を集中させたリア。炎を腕に纏わせたリアは一直線に目の前のイーナめがけて突っ込んでいった。


 目標は先生の腰の所にあるあの玉! もう少し、もう少しで届く!


 リアもソールもそしてルウも、『いける』とそう確信していた。初めてにしては驚くほどに綺麗に決まったコンビネーション。これならば、イーナの腰元の玉を割るくらいなら、出来るはずだと。


「うん……」


 笑みをこぼすイーナ。そのイーナの表情をリアは見逃さなかった。そして、直後、リアの目の前にいたはずのイーナの姿は忽然と消えていた。


――!? 一体どこへ!


 一瞬の戸惑い。それがリアにとっては命取りとなったのだ。先ほどまで魔力を込めていた腕に小さな痛みが走る。自由を奪われるような、そんな感覚。気が付けば、リアの身体はイーナにがんじがらめにされ、捕らわれていたのだ。


「接近戦なら、私には負けないと思った?」

 

 リアの首元、そしてありったけの力を込めたリアの右腕は完全にイーナの細い腕に拘束され、動ける気がしない。


――一体その小さな身体のどこから、そんな力が……!?


「リア! 危ない!」


 必死に叫ぶソール。気が付けばリアの目前にはソールやルウの放った魔法が迫っていた。


――やばい、このままじゃ僕に直撃する!


 そう、リアは自分たちが放った攻撃の盾にされてしまっていたのだ。焦る様子を浮かべるソールやルウを尻目に、イーナが小さく口元を動かす。


「炎の術式:纏炎」


 その言葉を発した直後、一気にイーナ、そしてリアの周りを炎の壁が囲う。各々が放った魔法はそのまま炎の壁に吸収され、跡形もなく消え去った。


――助かった……


 せり上がった炎が次第に小さくなっていく。あまりに一瞬の出来事に、理解が追いつかなかったリアだったが、ようやく自分の置かれた状況を理解し、助かったんだと、イーナの腕にとらわれたまま、ほっと息をつくリア。


 同時に、自分たちの全力を出しても、零番隊の討魔師には全く通用しなかったという事実がリアにのしかかる。これほどまでに圧倒的な実力差があるのかと。


 だが、そんな事は今はどうでもいい。どちらにしてもわかっていたことだ。今、この状況で、リアのはもう一つ、大きな問題へと直面していた。


――!? よく考えてみたけど…… この姿勢って……


 首元にはイーナの細い腕。背中に感じるイーナの体温。極めつけは、リアの背中にはイーナの胸が当たっていたのだ。


――ちょっ……


 先生! ちょっと胸があたってますって! それに、さっきからすごい良い香りが……


 イーナが少し動く度に、リアの鼻に香水とはまた違う、柔らかな良い香りが届く。チラチラとあたる長く柔らかい髪や、背中に当たる少し控えめな胸と相まって、リアはもうドキドキが止まらなかった。


 何せ、ソール以外、こんな近くで女性とやりとりをする事なんて、今まで無かったのだ。


――先生って…… 柔らかくて、それに美人だし…… いや、何を考えているんだ僕!?


 そんな、リアの戸惑いなど露知らず、リアを捉えたままのイーナがリアの言葉を放つ。


「リア、さっきの魔法見事だったよ。それに皆のコンビネーションも。だけど……」


――先生!? 何かありがたいことを言ってくれてはいるのかもしれないけど……!! 全然集中出来ません! 


 もはやリアの耳にはイーナの言葉なんてどうでもいい。今の自らの身が置かれた状況にリアの全神経が集中していた。


――やばいやばい! 先生のことを考えるな…… 深呼吸…… 深呼吸……


 必死に自らを律しようとするリア。イーナもソールもそして、ルウも真剣な表情をしている中で、そんな事など口に出せるわけもなく、リアは黙ったままひたすらに耐える。もはや違うことを考えて耐えるしかない。


 だが、すぐに大きくなる雑念。イーナ先生の匂い、そして柔らかな腕。


――だめだだめだ! 違う! 先生に…… 先生なのに!


「むやみに突っ込むだけじゃ、こうして自分たちの攻撃を利用されることもある。それは今後の課題だね」


――わかりました! わかりましたから! 一旦すこし離れませんか……


 もうドキドキが止まらない。おかしくなってしまいそうだ。


 そして、ようやくリアの異常に気付いたのか、ソールがイーナに向かって声を上げる。


「先生! リアが…… リアの顔が真っ赤に!」


「ごめんリア! 苦しかった!?」


 慌ててリアを開放したイーナ。焦った様子を浮かべながら、イーナがリアに言葉をかける。


「大丈夫? リア?」


「だ、大丈夫です……!」


 やっと開放されたという安堵に包まれたリア。だが、忘れもしないあのイーナ先生の肌に触れた感触。最初の第5班としての授業は、リアにとって、いろんな意味で記憶に残る授業となったのだ。



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