秋葉原ヲタク白書76 魔法使いのデシィ
主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。
相棒はメイドカフェの美しきメイド長。
この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第76話です。
今回は、メイドカジノのオーナーから、マジックショーのアシスタントの身元を調べるようリクエストされます。
調べる内に、何と彼女は強盗を計画中とわかりますが、オーナーからは、強盗を手伝うように追加のリクエスト…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 2人のアシスタント
マジックショーのアシスタントが大好きだ!
真っ赤なレオタードに網タイツで、文字通りカラダを張り華やかに頑張る姿が可憐過ぎる。
しかも、遺憾なく女子力発揮し男性目線を集めつつも常に魔術師を立てる健気さも泣ける。
今宵も狭いステージにモクモク焚かれたスモークの中から魔術師と一緒に登場。
マントを翻す魔術師の周囲をクルクル踊って回り、オープニングを盛り立てる。
「みなさん!ようこそ、今宵みなさんは驚異を味わう。きっと、我が目を疑うコトでしょう!」
魔術師の口上など誰も聞いてない。
君のレオタードの深い胸の谷間に…
絶品谷間!時間ょ止まれ←
谷間だけなら、ほとんどラスベガス級のゴージャス感に思わズ吸い込まれそう…
瞬間の気の迷いがバンドへのキュー出し遅れとなり間抜けなファンファーレにw
ココはアキバのメイドカジノで僕は箱バンのバンマスをやってる。
本業はサラリーマンなんだけど、週末だけ小遣い稼ぎでバイト中…
あ、本業は"作家"だた←
メイドカジノにはダンスフロアもあり、僕達はダンスバンドなんだが、ショーが入るとバンド席がステージに変わるので立って演奏。
お陰でマジックのタネが全部丸見えだw
「最初にお見せするのは、私がチベットの山奥でヨガ行者から習得した技です!霊感を使って、私の美しいアシスタントを水中へと瞬間移動させてご覧に入れましょう!」
すかさずファンファーレ(決まったw)!
すると"彼女"はスルリとレオタードを脱ぎ捨て…おぉ下は純白のワンピース水着だ。
何しろ今日は指折り数えて待ちに待った"水中脱出ショー"の日だからね。ブラボー!
水着姿の"彼女"は、ステージ袖から人1人が入る程度の縦長の水槽を運び込む。
さらに、確か楽屋にあった折りたたみイスを水槽の横に並べて座るや美脚を組む。
魔術師が近づき、ステッキから手品で出した花を彼女に捧げる。うわぁキザでしょw
すると"彼女"はレオタードに合わせたのか真っ赤な唇に指を当てて挑発的な眼差しだ。
魔術師が肩のマントを翻して"彼女"の首から下にマントをかけたら…床屋さんみたい笑
そして、次に起きたコトを一生忘れナイ!
ドラムロールが鳴り響く中、バンド席の奥からもう1人、さっきと全く同じ純白ワンピース水着を着たアシスタントがコッソリ出現w
まさか"彼女"が縦長水槽に飛び込むのかと思いきや黒頭巾を被って水槽の真後ろで細い手足をバタバタさせ溺れたフリ?を始めるw
魔術師が約束の目配せをしたので、呆気にとられたママ、ドラを鳴らしファンファーレ!
すると、どーしたコトか、さっきまでは疎らだった拍手が万雷の拍手となり歓声に指笛w
客からは、どう見えてルンだ?
「私に何をしたの?足の感覚がないわ!」
「きゃー!見て!あの人、頭しかないのに喋ってるわ!」
「私の脚は何処?感覚がナイ!助けて!」
最初?のアシスタントは、マントから顔だけ出す床屋スタイルのママ、首から上は大騒ぎをしているが下半身は気怠く脚を組んでる。
もう1人のヤタラ痩せたアシスタントは、逆に顔だけ頭巾で隠して、水槽には入らズその真後ろで首から下で"溺れ"を熱演してる。
何とも間抜けな光景だw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「あぁ。アレはね、私の前に鏡を立てて、映った床を見せてるの。暗がりだと、首から上だけ宙に浮いて見えなくもナイわ」←
「私は逆。頭巾を被った頭は水槽で屈折して背後の壁と見分けがつかない。さらに屈折効果で痩せの私もデブ…失礼、グラマラスに見えるってワケね」←←
「バンドの諸君もお気づきだろうが、水槽は円筒でレンズ効果を持たせており、衝撃にも強い。地方巡業には持って来いだ」
アシスタント1号2号に加えて、最後は魔術師御本人様が語ってくれる。
ショー終了後の楽屋。いつもはバンドの控室だが、今日は僕達は廊下w
そうは逝われても釈然とせズ、彼等には間抜けな一座との印象しか残らないが…
よく見るとアシスタント1号は太めの厚化粧で、恐らくアラフォーとお見受け。
対する2号は、かなりポチに近い痩せ型で、ノーメイク(頭巾なのでw)だが若い。
そのせいか、2号はこれ見よがしに魔術師にシナ垂れかかり勝手にイチャつく。
人目も憚らずサッサと水着をペロンと脱ぎ(剥がし?)帰り支度スル1号とは対照的だ。
まぁ僕は"谷間主義"なので、年齢には関係なく1号のコトを横目フォローしていたら…
「ソコの貴方!動くな!ホールドアップ!」
「えっ?何の罪かな?」
「デブを横目で見た罪よ!不潔だわ!」
目の前にホワイト水着のママの2号が…銃口がラッパ形に開いた銃?を僕につきつける。
恐ろしくスレンダーで、モデル的に大変整った顔立ちではアルが…僕的に何も感じない。
"主義"に反スルので←
「どうして、男は谷間ばかり気にするのっ!私はモデルよっ!モデルに対して失礼でしょ?」
「ま、待て!話せばわかる!」
「問答無用!」
そして、彼女は引金を引く!ま、お約束なので撃たれたフリでもしようかと思ったら…
パン!
クラッカーが弾ける爆発音がして、件の銃口からチャチな紙吹雪と旗が飛び出て来るw
「ウケる。大丈夫ょプラスチックのオモチャの銃だから。でも、コレ見て」
「何?どれどれ?"レイザ、人のネタを盗むな。デシィより"あれ?同業者からの警告?」
「みたいね。デシィはさっきのデブょ。あの"水中脱出ショー"はオリジナルなのにメインアシスタントの座を私に奪われたのを妬んでいるの。今更エクササイズなんかやっても遅いのょ。デブはデブ。パラサイトデブ」
ヤタラとデブを連発w
しかし、あの手足バタバタがメインなのか?だって顔は頭巾で隠れたママだぜ?
"谷間"の存在感を差し引いても、デシィがメインで、君が…サブではナイの?
「とにかく!アイツ、デブ、じゃなかったサブのくせに生意気なのよ。ねぇレイザ、貴方も何か言いなさいょ。魔術師である貴方がコケにされたのょ?」
「そ、そうだな…しかし、脅迫状に名前を書くバカってアリか?コレは誰か他の奴が書いてデシィをハメたンじゃないか?」
「あら?レイザ、ヤケにデシィの肩を持つじゃない?」
「俺は…去年まで彼女の前座をやってた。実は恩があるンだょ」
「ソレは、レイザの勘違い。デブが貴方の前座だったに違いないわ。だって、私はモデルだから」
「…どーやら、貴方達に任せても埒が明きそうもナイわねwとにかく、余りこーゆー楽屋ネタでギクシャクして欲しくナイのょ。テリィたん、悪いけど少し調べてくれる?」
若いモデルにケツを叩かれる魔術師レイザ、見兼ねて僕に仕事をフる"シノン大尉殿"。
シノン大尉は、メイドカジノのオーナーだけど、ワケあってココのカジノは軍隊組織だ。
僕の立場は、雇われ楽団のバンマスなのでシノン大尉の命令には絶対服従w
ハイハイと答えて承る。まぁポッチャリ流行りの昨今、1号に興味もアルし←
あ、彼女の人格にだょ!
"谷間"じゃなくてね。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「モチロン、この手紙には見覚えがあるわ。だって、私が書いたのだから」
「君は…いつも手紙は銃に入れて送るのか?」
「うふ。面白い人。貴方、いくつ?」
余計なお世話だよっ!
そーゆー君はアラ40?
僕は、アッサリと1号の居場所を特定スル。
区民センターの"相撲エクササイズ"だ。
太めの人のエクササイズと逝えばココ。
スタジオの中央には砂場と土俵がアルw
「僕達は、ヌビスから聞いた君のステージネームからココを特定した。君は、同業者のレイザに、かなり怒っていたようだね?」
「YES。レイザとは1年付き合ってたの。でも、痩せっポチのヌビスが現れ、モデルに目がないレイザは私を捨てた。ホント、男ってモデルに弱いンだから。そしたら!彼が私のネタをマネし始めたの!"水中脱出ショー"よ。傷ついたわ。ネタ泥棒は地獄に落ちろ!」
「それで、小道具の銃を使って警告したのか?でも、彼は君の逝うコトは聞かない」
「ええ。ソレに彼はあの技の名人だった。私以上に」
「ん?でも"水中脱出ショー"での彼の役割って"MCだけだょね?」
「細かいコト、逝わないで。嫌われるわょ?」
しかし…コレは大事な事実だょね?
途方に暮れる内にデシィは土俵へ…
「バチン!」
「ドン!」
「ごっつぁんです!」
肉塊と肉塊がぶつかり合う音。
飛び散る汗に、激しい息遣い。
巨女同士が目の前で激しくカラダをぶつけ合っている。
その最中に飛び込んで逝くデシィを…とても追えないw
「テリィたん。また来たの?今度は何?」
「あ、ドレミちゃん!実はちょっち煮詰まって困ってルンだ」
「とりあえず、ドレミのお姉さんに何か相談して御覧?」
肩を叩かれ、振り向くと巨女と逝うより、流行りの小柄ポッチャリ系のドレミちゃんだ。
彼女は、エクササイズではなく、弟子として道場?に来てて掃除などの雑用をしている。
「あのデシィさんナンだけど、よく来るの?」
「あらあ。直球でグラマーさん狙い?ミユリ姉様は知ってンのかしら?後で怒られるの嫌だから、私」
「仕事ナンだ。今回は"シノン大尉殿"のリクエストで動いてる」
ドレミちゃんは、またまたぁと逝う感じで、僕をつつく。
もしかして、トンでもナイ話になってミユリさんの耳に…
ま、いいや。その時は腹を括るしかナイw
ドレミちゃんは、いわゆる情報屋で、僕の知らないようなアキバの闇にも通じてる。
凄腕の情報屋…ナンだけど、ミユリさんには何か恩みたいなモノを感じてるらしい。
お陰で"ミユリ姉様の御主人様"と逝うだけで、何事もお安く色々と教えてくれる。
ありがたやー。ま、そーゆー女子が、このアキバには、ホントに多くて助かルンだw
「彼女は、賭けポーカーをやってるわ」
「えっ?ソレで借金で首が回らなくなってるとか?」
「ううん。その逆。彼女、カードマジックが得意なの。多分マジシャンなのょ」
「と逝うコトは…イカサマか」
「いつも"勝ち過ぎ"で恨まれてるわ」
第2章 直前の元カノは"前カノ"
エリスだぞ…
え?エリス?
また血の雨w
その囁きは御屋敷の中を小々波のように広がって逝く。
ココは僕の推しミユリさんがメイド長を務める御屋敷。
破壊と創造の暴君に準えて"土星バー"とも呼ばれる。
「お久しぶりね、ラッツ」
「その名で僕を呼ぶな」
「ワンオーダーお願いします。エリスお嬢様」
エリスが御帰宅するコトは、ホントに数えるホドしかない。
何しろ、エリスは…そのぉ、あの、まぁ僕の前カノなんでw
今カノであるミユリさんと、微妙なんだ。
ミユリさんは…珍しくムキになっているw
しかし、いつ見てもエリスは美少女だ。可憐と逝う言葉は、彼女にこそ相応しい。
長い黒髪に物憂げな瞳。儚過ぎる。既にアラサーで済まない年齢のハズなのだが…
ミユリさんがイライラとリピート。
「エリスお嬢様、ワンオーダーを」
「今宵は何を奢ってくださるの、ラッツ」
「じゃハーパーの水割り」
しまった!昔のクセでつい彼女の好みを…
ミユリさんは目を剥き、世にも恐ろしい目つきで僕を睨みつける。
でも、仕方無いンだ。僕が誘ったから。だって、彼女のパパンは…
「太めのマジシャン女子がポーカーでイカサマをやってる。聞いてみてくれないか"低い城の男"に」
「なぁに?そのサッサと用件だけ済まそうって態度。気に入らないわ、ラッツ」
「やめて!私の御主人様を昔の名前で呼ばないで!」
いきなり沸点に達したミユリさんが、そう叫ぶや拳銃を抜いてエリスの額に突きつける!
ワルサーPPS?護身用拳銃のベストセラーw
さすがに、顔面蒼白となったエリスが落としたグラスが粉々に砕け散る。
今カノが前カノを射殺?!ヤバい!僕は無我夢中で拳銃の前に飛び出す。
「落ち着け、ミユリさん!話せばわかる!」
「問答無用!浮気者は死ね!」
「えっ?!僕か?!」
銃声!コレも珍しいエリスの悲鳴が重なる。
僕は、胸に衝撃を覚え壁に叩きつけられる。
そのまま床へとズレ落ちた僕は、シャツの胸が見る見る赤く染まるのを呆然と見ている。
「救急車!」
ヘルプのつぼみんがスマホを抜いて叫ぶ!怒号と悲鳴が交錯して御屋敷は混乱の坩堝だ。
頃合を見計らい、僕はシャキッと立ち上がって歯でキャッチしたモノをみんなに見せる。
「え?え?何が起きたンだ?」
「テリィたんが銃弾を歯でキャッチした?!」
「マジすげぇ!神かょ?」
コレは"銃弾キャッチ"と逝うトリックで、危険に見えるが朝の歯磨きより安全だ。
カウンターの中のミユリさんが、舞台役者みたいな気取ったポーズで常連に御挨拶。
モチロン、ミユリさんのワルサーには、最初から弾丸が込められていない。
あとは空砲と同時に、騒ぎに紛れ僕が、舌の下に隠した弾丸を咥えるだけ。
昔、マジシャンの助手をやってたセフレが鍛えた舌で教えてくれた技だ。
いやはや、彼女と来た日にはホントに舌に手が生えているようだったが…
たちまち、御屋敷中が拍手と歓声に包まれ、指笛が鳴る中、エリスだけが悔しそうな顔。
「今回は貴女の勝ちょ、ミユリさん。貴女もラッツの舌遣いを楽しんでるのね」
「ふふふ。手を抜いた時は撃っちゃえば?貴女も撃ってみる?」
「ええ。でも、もっと大きな銃でお願い」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「見て見て!コレは"鉄の処女"よ!」
「中世の有名な拷問具だょね?マジック用かな?」
「あ!コッチに"ユダの揺り籠"もあるわ!」
ミユリさんは、明らかに喜んでるw
アレから、程なくしてエリスのパパン"低い城の男"から連絡が入る。
そして、紹介されたのが、この"物故オフ"なる中古品リユース店だ。
アキバ名物"雑居ビルの狭い急階段"をミユリさんのパンツを見上げながら4Fまで。
"低い城の男"から連絡が逝ってるのか、店主のライヤが揉み手をして待っている。
「御苦労様です!刑事さん」
「万世橋のテリィです。コチラはミユリ刑事」
「おぉ。こんなお綺麗な方が刑事さんとは。しかも、拷問具に御興味が?」
ライヤは、昔は質屋で質流れから今の店を起こしましたと逝わんばかりのハゲ頭←
実は、彼も僕達も本名を名乗ったが面倒臭いのでこのママ参ります。悪しからズ。
「古今東西、魔術師は多くの場合、死に魅了されるのです」
「うーん。拷問具やオカルト系アイテムを好むと逝う意味でしょうか?」
「全てに共通するキーワードは"オドロオドロしさ"ですね」
取り止めのナイ、と逝うか、実にどーでもヨイ話題だ。
この拷問具、ホントにステージの上で使うのだろうか。
もしや、私生活で?笑
"物故オフ"と逝うからには、物故品が専門ナンだろうな。
つまり遺産だから、元は何処かの家庭で使われていたのだ…
「毎朝、新聞の死亡記事欄に目を通し、コレは!と思う"物件"に逝くと、既に同業者が先回りしてるw意外にスピード勝負の生き馬の目を抜くエネルギッシュな業界ナンです。で、何かお探しでしたっけ?」
「詐欺事件に使われたテーブルを探しています」
「ええっ?そーゆーワケあり品はウチでは扱っていませんが」
「おや?せっかく、コチラが違法ポーカーの賭場であるコトには目を瞑ろうと思っているのに…いや。もし、捜査に御協力を頂けるのならですが」
「…改めて御用件を伺った方が良さそうだ」
「デシィさんは常連?太めの女子ですが」
「彼女が何か?」
「稀代のイカサマ師です」
「ええっ?!イカサマ師だって?で、でも、ウチはクリーンな賭場なので、そーゆー風評は立てられるだけでも困ります」
「ソレもあって、みなさんは事前に客を厳しくチェックしますょね?さらに、賭場でヤタラとカード捌きの上手いマジシャン紛いの女が出入りしたら、当然気がつくでしょ?」
「…ワザと見逃してました。彼女から金をもらって」
「おやおや。では、常連リストを拝見しましょうか」
「不要です。デシィがイカサマを働く相手はいつも決まってた。その男は、必ずカモにされ、借金もカナリかさんでたハズです」
「その男の名前は?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「私は"ヲタク設備"取締役社長のエイゼだ。刑事さんの質問に答えれば、賭けポーカーは見逃すと聞いたが…」
「YES。お互い多忙な身ですから手短かに参りましょう」
「しかし、最近は万世警察もメイドカフェで取調べを行うのかね?」
「そりゃ秋葉原ですから」
「私は、何もやってないぞ」
「デシィさんに大借金をしてましたね?」
「数週間前に借りは返した」
「そーですか。では、支払いの記録を見せてもらえますか?」
「そうしたいが…実は金じゃなく、情報で払ったンだ。"借金の3分の1を返して残りは月末に"と伝えたら、デシィから、もう金は要らないと言われたのでね」
「ソレで借金帳消しとは…デシィからのリクエストは何だったンです?」
「流石にソレは教えられナイ。だから、ココから先は"例えば"の話だ」
「モチロンです!」
「さっきも逝ったが、私は設備会社を経営してる。その関係で"例えば"彼女は、ウチが請け負ったビル設備に特別な興味を持っていた…カモしれない」
「ほほう。で、彼女が興味を示した物件は?」
「ソレが…俺達が闇で賭場を開いてた"物故オフ"ナンだ。空調、搬入口、商品フロア、金庫室…関係図面全てと、それぞれに使ってる鍵の種類も教えるようにリクエストされた」
「理由は?ま、まさか強盗?」
「言わなかった。私は、図面を全部コピーしデシィの自宅に10箱以上送った。後のコトは知らない」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
まだまだピースが足りなくて、ほとんど全体像は見えて来ない。
気は進まないケド、ミユリさんと中間報告?に逝くコトにスル。
ミユリさんと"シノン大尉殿"は、アキバが萌え始めた頃からの古い?付き合いなので。
「えっ?じゃデシィは賭けポーカーの売上を強盗するツモリなの?マジ?」
「いや。まだ、そうと決まったワケでは…」
「でも、どー見てもコレは強盗でしょ。でも防備は固いし警備も厳重。コレ、マズいんじゃない?辞めさせなきゃ!あ!デシィ!ちょっち話があるの!」
あちゃー。本人に直接逝うかな、普通。
君、これから強盗する気かって聞くか?
しかも、今はメイドカジノが開店直前で全てが最高にザワつく時間だ。
僕とミユリさんは、バーカウンターに腰掛けてシノン大尉に報告中で…
慌ただしくフロアを横切るデシィにシノン大尉が声をかける。
デシィは本番に備えて、既に真っ赤なレオタードに網タイツw
"絶品谷間"が萌える←
「調子はどう?」
「何もかも順調。ココはあくまでも一時的な仕事だから。次は太平洋を渡ってラスベガスょ」
「すごいわね。頂点に立つ夢を未だ捨ててナイ。でも、来年の今頃、ウッカリ和倉温泉の加賀屋とかで会うのはゴメンょ?」
「まっさかー。NYが私を呼んでる!わぁ!今から楽しみょ…」
ベガスじゃなかったか?
「でも、去年みたいにステージに穴を開けるようなコトがあると困るわ」
「確かに薬にハマって脱線したし、服役もした。でも、大したコトじゃないわ。ショービズの世界から干されたけど、こうして貴女が救ってくれた。私は復帰しつつある!」
「ソレで…賭けポーカーの売上金を盗む気になったワケね?」
「えっ?!静かに!誰かに聞かれたらどーするの?」
「なぜ強盗なんか。デシィらしくないわ」
「何のコト?貴女に関係ナイでしょ?」
「目が怯えてる。誰か大切な人を人質にとられてヤラされてるの?」
「まさか…でもね。襲うのは不可能だとわかったの」
「そんなコトは無いな。たかが質屋蔵だょ?日銀に金庫破りをかけるワケじゃあるまいし」
「誰?この2人は?」
「この2人は強盗のプロょ。既に現場の下見も終えてる」
「下見を?マジ?」
マジか?笑
「うーん。でも、あらゆる方法を考えたンだけど、私1人で盗み出すコトって不可能なのょ」
「心配しないで。この2人が力になるから…あら?テリィたん、何処に電話するの?」
「万世橋」
「待って!ねぇこの2人、ホントにプロなの?」
デシィも慌てるが、僕はもっと泡食ってるw
シノン大尉は強盗のお先棒を担がせる気か?
そんな話、聞いてないょ!
傍らでは、ミユリさんがクスクス笑ってるw
コ、コレは…シノン大尉とは握ってるのか←
ハメられた!でも、まぁアキバの御主人様は、メイドの尻に敷かれるのも仕事のウチ…
「そっか。じゃもう1つの土曜日…じゃなかった、もう1つの手段だ」
「というと?」
「僕達3人で襲おう」
「マジ?!月末なら金庫も満杯になってお得なのょ!」←
「OK。強奪方法を考えよう。少しディスカッションして…強盗しよう」
「ありがと。テリィたん!」
「コレ、貸しだから。"シノン大尉殿"」
第3章 男も混ざってキャッツアイ
その夜、メイドカジノはコロナ明け?の営業とあって大変な混雑だったけど、僕達3人は出番を免除され、楽屋にこもって作戦会議。
「OK、キャッツアイのみんな。座ってくれ。説明する。現場は小さな雑居ビルの4Fにあり、出入りは狭隘な階段を登った先のドアだけだ。因みに4Fにも窓はあるが、いずれの窓も開けると直ぐ隣接ビルの壁なので侵入には使えない」
「もし火事が起きたら全員焼死ってパターンね。新宿のキャバクラみたい」←
「1Fは古い町中華だから、その恐れは十分にある。で、最初の障害はドアの鍵だ。エイゼの情報に拠れば、凡そ雑居ビルのドアには似つかわしくない高級錠が付いてる。ダブルシリンダー本締まり錠だ。本人からの強い申し出があり、ピッキングはミユリさんにお願いするけど…何分かかる?」
「自己記録は2分半だけど…今回は時間に余裕があるし、3分ください」
しかし、ミユリさんって、いつ何処でピッキングなんて覚えたのだろう?
「で、ドアを開けると拷問具の並ぶ商品フロア、小さな商談用のラウンジ、カウンターと続き、カウンターの裏が狭いバックヤードだ。目指す金庫はバックヤードの壁際に並んだロッカーの裏だから、ロッカーは移動させる必要がある」
「監視カメラは?」
「商品フロアに万引き防止用のカメラが1台あって、コレが夜もオペレーションしてるけど、解錠して侵入したら、直ぐに僕がループ画像を噛ませるから問題ない」
「でも…テリィたんって、いつ何処でループ画像の噛ませ方なんて覚えたの?」
「実は前のセフレが女盗賊で…ってソンなコトより、下見した限りでは、バックヤードへは、カウンター奥の"関係者以外立ち入り禁止"と書かれたドアから入るが、錠は付いてない。バックヤードに入れば、ソコがもう事実上の金庫室だ。窓は頑丈な鉄格子だし、中はガランとしてて隠れる場所はナイが問題はない」
「そして、金庫の解錠コードは…私がエイゼにゲロさせたから知ってるわ」
「で、金庫を開けたら、中身を頂戴して一目散に逃走だ」
「それだけ?」
「シンプルだろ?だから、質問も反論も許されない。OK, girls?」
陽気な女盗賊2人が声を合わせる。
「Yes, absolutely!」
デシィが呼吸を整え…
意を決し聞いて来る。
「で、決行は?」
「今から」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「しかし、何で私達がレオタードになるのかしら?」
「キャッツアイだょキャッツアイ!君達は女盗賊キャッツアイなんだから、ココはレオタード以外あり得ナイでしょ」
「でも、アニメは全身タイプのレオタードでしたょね?生脚って、ちょっち…」
雑居ビルの狭い急階段を、ミユリさんの…レオタードのヒップを見上げながら登ってるw
眼福だー☆このまま天国まで続けば良いなーと思う時に限って、アッという間に4F到着←
だが?登り切った踊り場が狭く"やむなく"階段で待機すると、目の前にピッキングに取り掛かったミユリさんのヒップが突き出る…
は、鼻血が♬
「この錠、前にもピッキングされてるわ。でも、雑な仕事。左利きだって1発でわかっちゃう」
「万世橋に指紋採取してもらおうか?」
「触らない方が良いかと。君子危うきに近寄らズで参りましょう。あら?テリィ様、鼻血が…」
ヤバい!
「実は、さっき念のため、コロナの抗原検査を受けたら、鼻水が止まらなくなって…」
「え?何で今頃検査を?」
「いや。何となく気になって…そんなコトよりっ!さぁ次は、第3新東京電力のサラリーマンである僕の出番だっ!」
新入社員時代に取った電気工事士免許の知識をフル活用し監視カメラに細工する。
小さなランプが明滅しダミー映像がループで流れ出したのを確認しホールに突入!
先頭デシィ、続いてミユリさん。で、ココまでがムダに真っ赤な舞台用のレオタード。
最後の僕は特殊部隊の黒上下に兎のマスク。兎なのはタマタマで特に意味ありません。
確かミユリさんと"アリス"の合わせをやった時に買った奴だ。何もかも皆懐かしい…
(宇宙戦艦ヤマト沖田艦長の声で)
とにかく!先頭2名の女子レオタードだけならキャッツアイに見えなくもナイ。
深夜番組とかで時折やるキャッツアイのパロディに見える?うーん厳しいカナ?
暗闇に浮かぶ怪しい拷問具を見ながらアッチにミユリさん、コッチにデシィと妄想スルw
ねぇキャッツアイの御両人。せっかくレオタードなんだし、ちょっち試してみないか?笑
えっ?ミユリさんも妄想w
僕が"拷問される方"で?
ソッチかょ←
アッサリ"関係者以外立ち入り禁止"のドアまで来てしまい全てが虚しく終わる。
僕とミユリさんでバックヤードのロッカーを動かすと、裏から隠し金庫が現れる。
「さぁ解錠コードを入力して!」
「そ、そうね…あら?」
「どうしたんだ、デシィ?!」
何とデシィは顔面蒼白でブルブル震えてるw
「ダメ!思い出せないの!解錠コードを忘れてしまったわ!テ、テリィたんのせいょ!」
「えっ?(またもや)僕かっ?!」
「貴方、さっきミユリさんのヒップを見てヨダレ垂らしてたでしょ!何故いつもミユリさんなのっ?!」
ヨダレじゃナイ!鼻血だっ!
しかし、もしかしてデシィ?
「デシィ!しっかりしろ!ミユリさんには無い自分の胸の深い谷間を見ルンだ…そして…ゆっくり息を吸って…吐いて…僕が指を鳴らせば気分が落ち着いて…君は解錠コードを思い出す…ハズだ。僕が指を鳴らせば…君は解錠コードを思い出す…ミユリさんより深く…大きく…正確に…」
「私は…解錠コードを思い出す…テリィたんが指を鳴らせば…」
「そうだ。良い子だ、デシィ。じゃ指を鳴らすょ(パチン)。さぁ解錠コードを思い出そう」
「ええ。思い出したわ」←
遂に金庫は開き、デシィが中に入ってる袋を鷲掴み、僕達は真夜中のアキバへ走り出す!
第4章 拷問と女盗賊のセオリー
さて、今回も最後のピースを"鷲掴み"にして、ジグソーパズルの全体像が見えて来る。
先ず"鷲掴み"にした"袋"の中身は何だったのか?残念ながら札束では無かったンだ。
「ええっ?ポルノ雑誌?しかも古書w」
「この手の本が"ビニ本"と呼ばれてた頃の、恐らく"物故モノ"じゃナイか?戦後風俗史の1ページが、今、僕達に何かを語りかけようとしている」
「この薄い、ペラペラのビニール包装が?しかも…コレ、児童ポルノじゃないの」
既に閉店後で誰もいない、深夜の御屋敷に集まり僕達は"袋"の中の"戦利品"をカウンターに広げて内容を確認しているトコロだ。
ソレは所謂"ビニ本"で、透明な包装の下で幼気な少年少女が無邪気な笑顔で微笑んで…
ナイ!表紙だけだが、全員が全裸で激痛?に苦悶し恐らく絶叫してる!拷問系のポルノ?
あ、児童SMかw
止める間もなく、デシィがバリバリとビニールを破き、中の本をパラパラとめくり出す。
そして、彼女が指し示すページでは"ユダの揺り籠"に責められる幼女…ん?デシィか?
幼児体形なのに…
既に太ってるょ?
「実は、私は子役時代から筋金入りのデブ専AV女優。でも、苦節ン年、やっとマジシャンとして成功…」
「してないだろ、未だ?」
「…しそうになった矢先に"子役AV時代"の過去バレをネタに脅されるようになった。ソレで…シノン大尉に相談したの」
「ソレで、僕達が紹介されたワケか。せっかく"キャッツアイ"路線でミユリさんのレオタードが見れて喜んでたのに、実は"オーシャンズ11"だったンだね」
「ソレはね…デシィを脅迫してた人が…突然死んでしまったからょ」
思わずゾッとするようなコトを逝いながら現れたのはシノン大尉、その人だ。
ま、まさか、その人を殺してしまったワケではナイょね?聞かぬが花…かなw
「デシィをカモった男は、何故だか分からないけど、とにかく死んだの。すると、私達も予想外だったンだけど、突然"物故屋"ってのが現れて、あれよあれよと逝う間に、遺族から肝心のビニ本を買い取って金庫にしまってしまったの」
「ソコで僕達が呼ばれたワケか。まるで僕達は"ラスベガスのカジノの金庫破りに挑む犯罪スペシャリスト集団"みたいだ。ハリウッド映画の図式をそのママ、パクってるw」
「テリィたんは、さしずめジョージ・クルーニー?ブラッド・ピット?」
「しかも、クライムアクションなのに、ハリウッド定番の銃撃戦シーンと無縁でサスペンスに仕上がってるトコロもスゴい。まぁ僕の知らないトコロで、誰か死んでるカモしれないけどw」
「でも、そのかわり!お色気シーンは満載だったでしょ?ミユリさんに、マジシャン助手の真っ赤なレオタード、テリィたんのために着てあげたら?って勧めたのは私ょ」
おぉ!さすが上に立つ人は違う。せっかくだからココで…あ、カウンターで脚が見えズw
「確かに、ミユリさんのレオタード無しでは今回の件は成立しなかった。もし今後も、僕をハメる気なら、その時はミユリさんのレオタードはマストアイテムだと逝うコトを確認したい」
「テリィ様…私も"谷間"頑張りますw」
「ハイハイ、御馳走様。あのね、テリィたん。ココだけの話だけど、ミユリさんと私は、アキバに来る前からの知合いなの」
「え?シノン大尉も軍事慰問団でレオタードでマジシャンやってたとか?」
「バカ。惜しいけど。私達は昔、大連のストリップバーを舞台にね…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「マジックショー、開演1分前!」
舞台袖は大モメだw
「今宵の"水中脱出ショー"だけど、やはりアシスタントが水槽に入っても水が溢れないって不自然ょね」
「デシィ!今さらソンなコト言ってどーする?!板付だぞ!」
「そーよ。私はモデルで痩せてるから水は溢れないの」
ソコへ"シノン大尉殿"のお出ましだw
「うーん。確かに不自然カモね。ウチも来月ポーカーの国際試合をやるコトになったし、実は政権のIR指定も狙ってるから不自然は困るの。デシィ、明日から"女体切断"をやって頂戴。その方が"インスタ映え"するわ」
そして、呆気にとられる魔術師とモデル出身の弟子に告げる。
「short noticeで悪いけど、貴方達は、今夜でクビ。さ、テリィたん。ファンファーレ!」
「Yes, Mom!」
「さぁ、ショータイム!幕を開けるわょ!」
おしまい
今回は海外ドラマでよく登場する"マジシャンの弟子"をネタに、弟子に身を落としたマジシャン、追い落としたモデルの弟子、脅迫ネタを金庫に隠す"物故屋"に金庫破り、マジックショーを主宰するメイドカジノのオーナーなどが登場しました。
海外ドラマで見かけるNYの都市風景を、コロナ要請全面解除前後の秋葉原に当てはめて展開しています。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。