第48話 ガービッジドラゴンに迫る魔の手
あの村に俺達はちょくちょく遊びに行った。
赤ちゃん竜が気になったのもあるが、ミニアが友達に会いたがったためだ。
ふと鼻が赤ちゃん竜の臭いを捉える。
出所を探るとミニアの友達から臭いが漂って来た。
ミニアに伝言魔法で最近できた秘密がないか聞いてみろと伝えた。
「最近。何か。秘密の事。あった」
「えっ、なんで分かったの」
「ドラゴン的。勘」
「えへっ、秘密でドラゴン飼い始めたんだ」
あのドラゴンこの女の子に飼われているのか。
野生はどうなった。
あの闘争心はどうした。
「どうやって。知り合ったの」
「魔獣用の罠に掛かってて。弱ってたから餌付けしたのよ。そしたら、懐いちゃって」
野生がそんなに簡単に屈服するなよ。
やっぱりガービッジドラゴンって事か。
「見たい」
「いいよ。見せてあげる」
俺達がやってきたのは森の浅い所で周りには危険な魔獣の臭いはしない。
なんとなく安心した。
大木の根元に木箱が置いてありその中に赤ちゃん竜がボロボロの毛布に包まっている。
「がぉ(やるのか)」
「かわいい」
「そうなの意外と愛嬌があるの。ピッパっていうの」
やっぱり喧嘩腰だな。
野生は完全には失われていないようだ。
どうするかなこれ。
木箱が巣穴じゃドラゴンらしくない。
ここは一つ俺がレクチャーしてやるか。
ピッパは移動する事を渋ったが、岩盤が剥き出しの所に俺達は到着。
俺は胃酸のブレスを吐いて岩を柔らかくして爪でほじった。
「ガォーガァ(やってみろ)」
「がぁ(なんで)」
「ピッパ、頑張って」
「がぁがぉ(おいら、やっちゃうよ)」
ピッパは胃酸のブレスを吐き岩盤に懸命に巣穴を掘る。
俺も一部手伝ったが立派な巣穴が完成した。
「これで敵も恐くないね」
「がぉーぎゃぎゃ(もとより恐くない)」
「たまに様子を見に来るから、無茶しちゃ駄目よ」
もう少し大きくならなけりゃ女の子には脅威ではないだろう。
ちょくちょく見に来て様子を確認して危ないようだったら忠告するか。
そして、数日経ったある日、ピッパの巣穴があるすぐ近くで黒い豹を連れた怪しい三人組を見つけた。
「本当にドラゴンの卵があるんだろうな」
「見た奴がいる」
「いよいよ、俺もドラゴンテイマーだ」
最後の一人に見覚えがある。
テイマーのズリーだ。
黒い豹はズリーの従魔だろう。
黒い豹はすんすん鼻を鳴らすとズリーの足元に擦り寄った。
「近いぞ」
「見つけた」
「巣穴だ」
「既に卵は孵ってしまったようだな」
「何かまう事はない。捕まえてしまえばやりようは幾らでもある」
見つかってしまったか。
「許せない」
ミニアが怒りに燃える。
しばらく見ておけと文字を出した。
「煙玉を放り込め」
俺は男達に気づかれないように木々の後ろからそっと見守る。
なぜなら子供のドラゴンにとっての敵はいたる所に居るからだ。
俺が居ない間は自分自身で身を守らねばならない。
それが野生ってもんだ。
ドラゴンは愛玩動物ではない。
まあ今回は危なくなったら助けるけど。
巣穴から煙をかき消し風の刃のブレスが突然放たれた。
「痛たっ。こいつ凶暴だぞ」
「小さくてもドラゴンだ。抜かるなよ」
「こいつを従えて俺はドラゴンテイマーになるんだ。パレオ、ゴー」
ズリーの合図で豹が巣穴に首を突っ込む。
ぎゃんぎゃんと情けない声を上げて豹が飛び退いた。
鼻面からは血が垂れている。
ほぉ、やるもんだ。
ドカンともの凄い音がしてズリーが吹っ飛ぶ。
風の砲弾ブレスを吐いたようだ。
強くなっているな。
女の子に警告しないといけないかもな。
続けて二人の男も吹き飛ぶ。
さて、どう始末をつけよう。
俺は木々の間からぬっと顔を出し、前足で豹を押さえ込んだ。
「親がいるなんて聞いてないぞ」
「もの凄い大きな雌竜だ。この凶暴なのを産むのも頷ける」
「こいつはあの火竜じゃないか。居ないと思ったらこんな所で卵を産んでたのか」
俺が産んだ訳じゃないんだけど。
「だが、ドラゴンが子育てするなんて始めてだ」
「ドラゴンの生態は謎になってる。こんな事もあるんだろうよ」
「そう。これは。ウィザの子。手出し。抹殺」
ミニアが物騒な事を言った。
「ひぃ」
情けない声を上げてズリーが逃げる。
二人の男も後に続いた。
俺はとりあえずの危険は去ったと思い豹を放してやる。
豹は尻尾を股の間に挟み逃げていった。
「ぎゃおーがお(おいらは無敵だ)」
こいつ、つけあがっているな。
よし、いっちょう相手してやるか。
掛かってこいよ。
俺が吠えると風の刃のブレスを放ってきた。
体で楽々受け止める。
そして、俺は尻尾で横から軽く叩き転がしてやった。
尻尾に噛み付きにきたので、自由に噛ませてやる。
いいかげんくすぐったくなったので、尻尾を一振りして振りほどいてやった。
ごろごろと転がるピッパ。
立ち上がり戦力差に怯えることなく挑発の雄叫びを上げた。
やっぱりドラゴンだな。
ミニアは俺が遊んでやっていると勘違いしていた。
「遊んで。もらって。良かったね」
そんな事を言った。
ドラゴンの闘争心には付き合いきれないな。
俺の負けだ。
俺は羽を広げ逃げるように大空に飛び立った。
ズリーみたいな奴が現れるって事は巣穴を別の場所に移した方が良いんだろうな。
でもピッパが承知するかな。
ドラゴンはなんたって我侭だからな。
ウィッチと伝言魔法してドラゴンがする子育ての実態が分かった。
祝福したら放置だそうだ。
そして両親が揃って祝福するのはあまりないそうだ。
つがう過程が無理やりってのが多いそうで、険悪になる事もしばしばだとか。
雄雌の付き合いには二通りあって一番穏便なルートだと。
財宝を見せ合い、意気投合して交尾。
それから卵が生まれるまで一緒に過ごす。
卵が生まれたら二匹で祝福して別れる。
まあこんな具合だ。
穏便じゃないルートだと。
雌竜が雄の財宝を強奪。
そして、無理やり交尾。
卵が生まれたら一匹で祝福。
こんな感じだそうだ。
そりゃ一匹で祝福って事になるよな。
ドラゴンは一般的には雌の方が大きいそうだ。
だから力ずくになると雌の意見が通る。
俺が雌に間違われたのもこのせいだ。
ドラゴンは大きいと雌らしい。
それと卵を産んでしばらくすると卵の事はどうでも良いって気持ちになるだそうだ。
ドラゴンの習性は薄情だが、野生だからな。
俺にドラゴンの生態の知識が入っていないのはなんでだ。
無用なトラブルを起こしそうなので嫌なんだが。
疑問に思ったら今度はウィッチに気軽に聞こう。




