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賢神界の追放者  作者: Shiron
7/20

第六話:冒険者登録

どうも皆さん!最近更新予定を守っているShironですっ!(書き終えた小説のストックが無くなってきた……。どうしよう。)


さて、今回も頑張って書きましたよ!?面白い話に仕上がっているはずです!


おっと、そうでした!初めて活動報告というものを書いたのですが、そこでお知らせした通りTwitterを始めました。@Shiron_novel

そこでは小説の執筆の過程での近況報告や、小説の情報などを発信しようと思います!そちらの方もよろしくお願いします!


 ふっと意識が戻る。身体は柔軟な所に横たわっているようだ。いや、俺はどうもうつ伏せで寝る癖があるようなので、厳密に言うと横たわると言うよりは寝そべっているという表現の方が正しいだろう。


 次第に、町の人々の活気溢れる雰囲気が、主に聴覚によって感じ取れる。ある人は街頭で会話を楽しんでいたり、ある人は装備品の擦れる音を鳴らしながら、忙しなくしているようだ。


 今日は何をしよう………。明日にはこの町を発たなければならないから、旅の準備を整えなければならないか。何を準備しよう………。武器は俺には必要ないし、アリシアは長剣を持っている。ソアは…、まずどのくらい戦えるのかがよく分からないが、恐らく肉弾戦向きではなく、魔法戦向きだろう。


 では防具はどうだろう………。俺には必要ないし、アリシアも割と立派なものを持っていた。ソアは…、もし魔法で戦うなら、重厚な物ではなく鎖帷子(くさりかたびら)のようなものを身に付けておけばいいだろう。いや、そんなことをするなら、ソアの服に俺が防護魔法を施しておけば良いだけなのではないか………。


 そんなことを考えているうちに、意識が鮮明になり、ようやく完全に目が覚めたようだ。すると、何やら俺の左腕の中に温かくて柔らかい何かが存在することに気が付いた。その正体を何となく想像は出来るものの、違う可能性に賭けて目を向けてみると………。


 ああ………。これが俗に言うお約束展開というやつか………。


 生憎と賭けは外れ、そこには金色の髪をした少女が居た。ソアだ。不幸中の幸いと言えるのかは定かではないが、きちんとワンピース型の寝間着を着ていたので少しばかり安堵した。しかし、どんな夢を見ているのか知らないが───いや、知りたくもないが───俺の名前を呼びながら奇妙な声を漏らしている。


 しばらく俺はこの状況に当惑していたが、そろそろ起きなければいけないので、ソアが目を覚まさないようにそっと左腕を退けた後に、身を起こした。


 俺は浴室に隣接する小さな洗面所に行き、古びた洗面台に取り付けられている蛇口を捻る。すると、チョロチョロと冷水が流れ出るのでそれを手に掬って顔を洗う。水の勢いがあまりにも弱々しいが、これ以上強めることは出来ないらしい。


 顔を洗い終えさっぱりした後、パチンと指をならし身体を魔宝庫の魔法陣に潜らせる。すると、俺の服は寝間着からアリシアに買ってもらったこの世界の服へと変わる。


 そろそろソアも起きるかと思ったが、カーテンを開けても未だに起きる気配がないので、身体を揺さぶる。


 「ソア。朝になったぞ、起きろ。」


 ……………。


 まだ起きはしないが、少し眠りが浅くなったのか、先程まで出していた怪しげな声は無くなった。


 もう少ししたら起きるだろうと思い、俺はアリシアの様子を見に隣の部屋の扉の前まで来てノックする。


 「アリシア起きているか?」


 呼び掛けてみるものの返事は無い。二人とも朝は弱いタイプなのかと思いながら、無意識に扉のノブを掴んで開けてしまった。鍵が掛かっていなかったのだ。まだ寝ているなら一応声をかけておいた方がいいと思い、そっと中の様子を見る。やはりまだ寝ているのか、姿は見えない。


 仕方なく彼女を呼びながら部屋に入ると、右手側にある扉が開く。ほんのりと良い香りと少しばかりの湿った熱気と共に現れたのは勿論アリシアだ。


 「あっ………。」


 「………。」


 俺が声を漏らすのと同時に、俺とアリシアの目が合った。先程まで入浴していたのは一目瞭然。まだ湿りを残した金色の髪、彼女の身体から感じられる熱、何より白いタオル一枚を身体に巻いているだけと言う格好はそれしかあり得ない。


 「い、いや、悪い! まさか入浴していたとは思わなかった! お前を呼びに来たのだが、扉の鍵が開いていたので………。」


 どんな言い訳だ………。第一、扉が開いたからと言って本能的に中に入ってしまったのがいけなかった。どうしてこうもお約束展開と言う奴が続くんだ。今度お約束展開という奴に会ったら塵も残さず消し飛ばしてやる………。


「っ……………。」


 アリシアは下を向いて右手でタオルを押さえたまま動かない。


 「ア、アリシア………?」


 「………、あの………。」


 アリシアが頬を赤らめ上目遣いで言う。


 「出来れば…、着替え終わるまで待っていてもらえると助かるのですが………。」


 ふっと、遠退いていた冷静が一部帰ってきた。


 そ、そうだな。こういう状況で固まっていても先に進まない。むしろお互い気まずいだけだ。


 「あ、ああ。準備できたら言ってくれ………。」


 俺はそう言って部屋を出て扉を閉める。「ふぅ………。」と一息ついて背を壁にもたれさせる。


 仲間と共の初日からこれでは先が思いやられる。


 仲間………。思わずそんなことを思ってしまったが、仲間などと言う単語を使う時が来るとは思わなかった。賢神界では俺は仲間を欲しようとはしなかったし、必要ともしなかった。俺に仕えている者達の事も、勿論信用はしているが、どこか距離を置いている自分が居たような気がする。この世界に来てまだ少ししか経っていないが、俺の中で何かが変化しようとしているのかもしれない。


 ガチャリという音を立てて目の前の扉が開きアリシアが少し気恥ずかしそうに顔を出す。


 「どうぞお入りください………。」


 「ああ………。」


 気まずい……。アリシアの部屋に入り椅子に座るまでのほんの僅かな時間が、とても長く感じられる。


 「さ、さっきは悪かったな……。」


 「い、いえ! 鍵を掛け忘れていた私が悪いのです。」


 何とかこの気まずい状況を解消しようと、その原因である先程のお約束展開……、否、事件について謝罪したが、一度出来上がってしまった空気はそう簡単に消え去りはしなかった。


 「ところで、私に何かご用ですか?」


 お互い椅子に座ると、アリシアがそう本題を切り出してくれたので、気まずい雰囲気が少し遠ざかった。


 「ああ、今日一日の予定についてだ。基本は旅に必要な物の買い出しになると思って朝起きたとき少し考えてみたが、お前は十分装備が整っているし、俺は防具も武器も必要としない。あとはソアだが、見るからに近接戦闘型ではない。何より戦えるのかさえ定かではない。だから、何を買おうか相談したくてな。」


 「なるほど……。そうなると、買うものはいつでも野宿出来るように必要な物、寝袋や最低限の調理道具……。でも、王都への道には、途中にいくつもの村や町がありますから必要ないかもしれません。なので、ソアさんの装備を優先して買った方がいいかもしれませんね。」


 「そうか。なら今日はソアの装備品の購入をメインに準備しようか。装備の内容についてはソアが起きてからだな。」


 「そうですね。あと、ポーションをある程度買っておけば良いと思います。」


 ほう。この世界にもポーションは存在するのか。


 賢神界では戦争時代によく使われた。魔法を使えない者でも治癒ポーションを使えば瞬く間に傷が癒えるというものだ。他にも、解毒するポーションや枯渇した魔力を回復されるポーション等があった。しかし、戦争が終結し、十二の国が和平を結び賢神連合界となってからは、戦がないため、需要がかなり下がった。


 「この世界にもポーションがあるんだな。分かった、それも買お─────」


 あっ…………。金が無い。


 「シロンさん?」


 途中で言葉が途絶えた俺に反応して、アリシアが疑問符を浮かべる。


 「アリシア……。この世界で手っ取り早く金を稼ぐにはどうすればいい……。」


 ………………。


 ………。


 …。


「ふふっ。」


 しばらくの沈黙の中、目を丸くしていたアリシアが笑いだし、不思議な間が終わった。


 「アリシア?」


 「ふぅ……。ごめんなさい。少し面白かったものですから。」


 そう言うとアリシアは指で、少し目に溜まった涙を拭って続けた。


 「そうですね、お金の稼ぎ方はもちろん色々ありますが、迅速にとなると、ギルドで冒険者登録して依頼をこなしていくのが良いでしょうか。」


 「冒険者……。それはどんな依頼をこなしていくんだ?」


 「えーと、種類は沢山ありますが、冒険者と言ったらやはりモンスターの討伐でしょうか。それが一番報酬金が高いと思います。」


 モンスター……。それにはこの前戦った魔獣の様なものも含まれるのだろうか。モンスターという括りの中に魔獣も存在すると考えた方が自然だろうか。


 「なるほどな。それに、俺に向いている感じがする。よし、ソアが起きたら早速、ギルドとやらで冒険者登録をしよう。」


 「分かりました。冒険者登録をするには、登録料が必要になると思いますので、それは私がお支払いたします。」


 「すまないな。お前には迷惑をかける。」


 「いえいえ、お気になさらずに。むしろ伝説の勇者様のお役に立てるなら光栄なことです。」


 俺が申し訳なさげに言うと、アリシアはいつも通りの笑顔で応えてくれた。が、まだ俺が伝説の勇者と決まったわけではないのだが……。


 「では、俺はソアの様子を見てくる。そろそろお腹も空いてきたからな。」


 「分かりました。準備が出来ましたら朝食にしましょう。」


 俺は「ああ。」と了解の意を示しながら、アリシアの部屋を後にする。


 俺はソアと共同で過ごす部屋に戻ると、未だベッドで寝息をたてているソアの身を揺する。


「おい。そろそろ起きろ。」


 ……………。


しばらく声をかけていると、次第に意識が目覚めてきたソアが、その紅い瞳をうっすらと開ける。


 「……。シロン……?」


 「おはよう。目覚めはどうだ?」


 「うぅ……。まぶしい……。」


 「朝食にするぞ。お前にとったら久方ぶりの食事だろう?」


 すると………。


「─────っ! ご飯っ!?」


 カッと、その紅い瞳を大きく見開いたソアが、瞬時に身を起こす。窓から差し込む朝陽が、彼女の金色の髪の毛で乱反射し、眩く光っている。


 「準備……してくるっ!」


 そう言うとソアは、ベッドから飛び降りて、洗面所に向かい朝の支度をしていった。



 ───しばらくして───


 「お待たせっ!」


 昨日、気前が良すぎるアリシアに購入してもらった洋服に着替えたソアは、期待に目を輝かせて、準備完了を報告してくる。


 「よし。アリシアを呼ぼう。」


 俺とソアは部屋を出て、隣のアリシアの部屋の前まで来る。俺は扉をノックしてアリシアを呼ぶ。


 「アリシア。ソアの準備が整った。朝食にしよう。」


 「ソアさん、おはようございます。それではこの宿の向かいにあるお店で、朝食にしましょう。」


 部屋から出てきたアリシアは、そう言って店に案内してくれた。


 昨夜の話し合いで、ソアが400年間、トルドの森地下迷宮で封印されていたことを知っているアリシアは、「沢山食べてくださいね。」と、いつも通り気前がよかった。


まぁ、まだこの世界のお金を持っていないので、何かするにしてもアリシア頼りになってしまうのが、本当に申し訳ないが……。


 アリシアに連れられて、静かな雰囲気の飲食店に入った俺達は、空いている席に座って、メニューを確認していた。


 アリシアは、昨日この店を訪れたらしく、ある程度メニューを把握している様子だ。俺の隣に座っているソアはというと、キラキラと目を輝かせながら、遠慮など一切お構いなしに、あれもこれもと、注文している。


 しばらくして注文した料理が運ばれてくる。(テーブルのスペースを埋め尽くす品々……。)


 「美味しい……。400年ぶり……言い表せない感動。」


 そんなことを言いながら、ソアは一心不乱に食事にがっついている。


 お前のその小さな身体のどこに、こんな大量の食べ物が入るのだろう……。しかし、400年ぶりなのだから仕方のないことか。常人ならば、そんな長い間、正気を保っていることなど出来ないだろう。ましてやソアは、その体質上、死ぬことは無いときた。想像を絶する苦難であっただろう……。


 俺はソアを見ながら、そんなことを思っていた。ソアは、そんな俺の目線に気づかずに、やはり、がっついて食べていた。


 「そう言えばアリシア。なぜお前は昨日あの森に居たんだ?」


 俺は、ふと思い出した疑問をなげかける。


 「実は、昨日ここで朝食をとっている時に、他のお客さんの会話が耳に入りまして。」


 と、アリシアは説明を始める。


 「昨日トルドの森からの帰りにお話しした、魔王襲来の件だったのですが………。」


「実は、魔王でもその幹部でもなく、俺だったと………。しかし、何故それが森に行くことに繋がるんだ? むしろ危険だろ。」


 「それは、シロンさんにその事を伝えないとって、思いましたから。」


 出会ったばかりの人を、そこまで気遣うとは………。やはり、かなりのお人好しだな。まあ、少々危なっかしいな。



 しばらくして、朝食をとり終えた俺達は───ほとんどソアが食べていた───この町『グルーナ』にある、ギルドに向かっていた。


 アリシアによると、グルーナは、規模としてあまり大きな町ではないらしく、そのせいもあってか、ギルドも立派な建物ではなかった。所々、外壁が剥げていたり、ヒビが入っていたり……。しかし、武器や防具を身に付けた、いわゆる『冒険者』で賑わっており、決して、ただボロいだけの建物ではない。


 俺とソアとアリシアは、ギルドの建物に入り、出入り口近くの飲食スペース(ギルド酒場)を通り過ぎ、奥のギルドカウンターの前へと立った。


 「すみません。冒険者登録をお願いしたいのですが。」


 アリシアが呼び掛けると、ギルドカウンターに、茶色い髪を後ろで一つに束ねた女性が現れる。


 「はーい。って、昨日の……。」


 「はい。昨日はありがとうございました。とても良い宿を紹介していただいて。」


 「それは良かったです。えっと、今回は冒険者登録ということでしたが、そちらの方達もご一緒ですか?」


 カウンターの女性が俺とソアに視線を向けてくる。


 「はい。一緒にお願いします。」


 アリシアがそう答えると、カウンターの女性は「分かりました。」と言って、冒険者の簡単な説明を始めた。


 まとめると大体こんな感じだ。


 ・冒険者とは、ギルドに所属し、ギルドに寄せられた依頼をクエストとして達成することを目的とした職業である。

 ・各クエストには、報酬金が設定されており、冒険者はクエストを達成することによって、その報酬金の八割を得る。(二割はギルドに納める)

 ・冒険者は一種の職業であるが、他の職業を掛け持っても良い。

 ・ギルドはエシュタリア王国内で連携しており、どこのギルドの依頼もクエストとして受任できる。(クエストの達成報告は、その依頼を受注したギルドにしなければならない)



 説明を一通り聞き終えると、カウンターの女性は人数分のカードを差し出した。


 「それでは、こちらが皆様の冒険者カードになります。こちらのペンで氏名を記入してください。」


 ギルドカウンターの女性から、ペンを貰い、カードに名前を………。


あ、この世界の文字を知らないぞ………。(何故か音声言語は同じである)


 俺がペンを持ち戸惑っていると、隣で書き終えたアリシアがその様子に気がついた。


 「シロンさん、私がお書きいたしますね。」


 「悪いな。これからはこの世界の文字も学ばねばな……。」


 見慣れない文字で、俺のカードにアリシアが記入していく。これはこの世界の文字を学んでから気がついたことではあるが、冒険者カードには名、つまり、『シロン』とだけ書けば良いらしい。そして、このカードは魔法による記憶媒体として活用されるらしく、達成したクエストなど、活動内容を記録するものらしい。ただ、氏名と活動内容以外の情報は記録されず、ありきたりの、魔力測定の結果が記入されるといったようなことはない。


 俺達は記入を終え、正式に冒険者登録を済ませると、手始めに簡単な依頼をクエストとして登録し、受けることとなった。


 「クエストに行く前に、ソアの装備をどうするかだな。」


 ギルドから出たところで、俺はソアの装備について話を切り出す。


 「私の………?」


 「ああ。ところで、お前はまず戦えるのか?」


 そう聞いてみると、ソアは頬を膨らませて答えた。


 「もちろん戦える。それに、かなり強い。」


 自信満々にそう答えた。隣でアリシアは「それは心強いですね。」などと言って、真に受けていた。


 「なら、どういう戦い方をするんだ? 流石に近接戦闘という感じではないだろう。」


 「うん、魔法戦が得意。体質上魔力も枯渇しないし。でも…、元々の魔力量が多くないから、大規模の魔法はあまり使えない。」


 「ほう。まあ、戦えるのは分かった。なら、装備はどうする?」


 俺がそう聞くと、ソアは唸りながら考え込む。


 「では、取り敢えず今回のクエストで様子を見て、必要なものがあれば購入するというのはいかがでしょうか。」


 と、アリシアが案を出す。ソアもそれで良いと言って、話はまとまった。


 

 ───グルーナの町外れ。とある平原───


 「さて、クエストは何だったか。」


 「たしか、ジャイアントワーム種を五体討伐…、だったはずです。」


 と、アリシアが答える。


 ジャイアントワーム種とは、端的に言ってしまえば、とにかく大きな身体をした虫型モンスターである。しかし、その種類は様々なうえ、幼虫から成虫までいるらしい。


 正直、虫は苦手なので、それがより大きいと聞くと、悪寒がする。


 「ここは、私の力を見せるとき。」


 いつになく自信満々なソアが豪語する。


 「あの…、まだモンスターは見つかっていないのですが……。」


 水を差すようで申し訳なさそうに、アリシアが言う。


 「まぁ、見てて。」


 そう答えるとソアは、一呼吸置いて何かを唱え始めた。


 「《吹き抜ける風よ 広がる息吹よ 我にその声を聞かせたまえ》」


 『ブリーズ・サーチ』という魔法らしい。いわゆる索敵魔法だ。


 ソアの足下に円形の魔法陣が展開される。すると、微風が発生し、この広い平原を吹き抜けて行く。


 「………。七体見つけた。」


 魔法陣が消滅すると同時に、ソアがどや顔で言ってきた。


 「す、凄いです……。七体も発見するほど広範囲を索敵出来るなんて。」


 アリシアが驚嘆している。しかし無理もない、俺も少し驚いた。確かに俺は索敵魔法は得意な方ではないが、それでも十二賢神が行使する魔法。それなりの規模と精度で索敵出来る。が、ソアはそれに等しいと言っても過言ではない規模と精度で索敵を行った。


 どや顔を向けてくるだけのことはあるな………。


 ソアの発見したジャイアントワーム種の居るところまで、移動してきた俺達は、三人揃って同じことを思う。


 気持ち悪い………。


俺達の目前に居るこのジャイアントワームは、バッタであった。(現代で言うショウリョウバッタだ)考えてみて欲しい、子供時代は愉快に捕まえたりして楽しんだだろう。しかし、そんなものとはレベルが違うのだ。通常サイズの比でない大きさなのだ。緑色の身体に、前上方に突き出した頭部。


 ああ……。今すぐ消し去りたい………。


 そう思った刹那、ジャイアントなバッタが立派な脚の力を活かして突進してきた。


 ソアとアリシアは、魔法の詠唱もしておらず、不意をつかれた顔を浮かべていた。その巨体からは想像し難い勢いで突進してくるジャイアントなバッタが眼前に迫る。が─────


 「悪いな。俺は詠唱を必要としない。」


 俺は右手を、突進してくるジャイアントなバッタに向け、即座に魔法陣を展開する。


 「『豪火球(ゴーアルタ)』」


 俺とジャイアントなバッタの距離は(わず)か数センチ。ふれ合うギリギリで右手前に展開した魔法陣から、猛々しく燃える火球が放たれる。大きな燃焼音と共に、ジャイアントなものは消え去り、後には灰が舞っていた。


 「危うく手が触れるところだったぞ……。」


 俺はそうぼやきながら、二人の方へ振り向く。


 「思わず消し炭にしてしまったが、討伐数はどうやって報告するんだ?」


 唖然としていた二人だったが、俺の質問にはっと意識を戻したアリシアが、申し訳なさそうに答える。


 「ええっと……。討伐したモンスターの種類が確認できる部位を、ギルドに持ち帰らなければいけないのですが……。」


 風が吹き、灰が飛ばされて行く………。


 「でも、まだ六体残ってる……。この調子なら討伐は簡単。」


 こちらも意識を戻したソアが、フォローしてくれる。


 持ち帰るのか……。あんなにジャイアントで気色の悪いものを……。


 そんなことを考えながら、残りのモンスターの居る場所へ向かった。


 ───しばらくして───


 ジャイアントな蝶一体、カマキリ二体、バッタ二体、ミミズ一体。それぞれ形の残るように倒し、そのモンスターの種類が確認できる部位を採取……するつもりだったが、全会一致で触りたくないということで、俺の魔宝庫に保管して持ち帰ることにした。(勿論、他のものをしまっている魔宝庫とは別の空間に保管した)


 俺の空間移動(テレポート)でギルドまで直接帰った俺達は、ギルド内の人達からの、謎の驚愕の目線を浴びながら、ギルドカウンターで、クエストの達成報告をしようとしていた。


 「すみませーん。クエストの達成報告をしたいのですが。」


 アリシアがカウンターでそう呼ぶと、いつもの女性が出てくる。


 「はいはーい。達成報告ですね……というか、早くないですかっ!?」


 「まあ、そうなりますよね……。」


 アリシアが苦笑する。


 「えっと……。それでは、ジャイアントワーム種五体の討伐のクエストですので、討伐したモンスターの種類が確認できる部位を提出してください。」


 カウンターの女性がそんなことを言い出すので、俺は内心「いいのか? ここで出しても?」と悪戯心を少し芽生えさせながらも、流石にそんなことはできず。


 「何処か広い所で渡そう。ここでは狭すぎる。」


 俺がそう言うと、カウンターの女性は怪訝な顔を浮かべたが、アリシアが説得し、ギルドの裏手にある広めの空き地に来た。ここは何でも、討伐されたモンスターを運んできて、解体して得られるものを、様々な用途に使用される素材にする作業場らしい。その証拠に、モンスターの革などが、加工されている様子が窺える。


 「ここなら十分だな。」


 俺はそう言って指をパチンと鳴らす。すると広場の真ん中に魔法陣が展開され、そこから回収してきたモンスターの亡骸が現れる。


 「なっ………!?」


 カウンターの女性だけでなく、この場で作業していた人達も、揃って驚愕の色を浮かべる。


 「きちんと五体。確認できるように持って帰ってきてやったぞ。」


 作業員達の目線がこちらに集中する中、カウンターの女性は驚きから覚めないまま、提出されたモンスターの部位……ではなく、全身をそれぞれ確認し、俺達の、冒険者としての初めてのクエストの達成報告を済ませたのだった。


 その後、“新人冒険者のパーティーが、討伐したモンスターの亡骸を丸々持って帰ってきた”という噂が、町中に広まった。


 ギルドを出た俺達は、クエスト出発前に決めたことについて話していた。


 「それで、ソアさんの装備はどうしますか?」


 「そうだな、金もかなり手に入ったから、割と良いものが買えるんじゃないか?」


 「う~ん……。正直、このままで問題ない……。」


 「「「うーーーーん………。」」」


 そんなこんなで、結局装備は必要ないという結論に至り、稼いだ金は、この町の出発に向けた準備の資金にあてることとなった。



 「ついに明日……。」


 三人で町をまわり、明日の出発に向けた買い物をしていると、ソアがそんなことを呟いた。


 「そうですね。明日この町を出て、王都に向かうんですね……。」


 と、アリシアが何処か遠くを見ながら言う。


 「早起きしろよ、ソア?」


 俺がソアに念を入れると、「シロン、私は子供じゃない。」と拗ねて答えた。そして、俺とアリシアはそれに笑った。


 買い物を終える頃には、空が茜色に染まっていた。


 消費した魔力を回復させたり、解毒したり、治癒を施すポーションや、ちょっとした料理道具。旅に必要なものを買いそろえた俺達は、一旦荷物を整理するため、借りている宿に戻ることになった。


 俺の魔宝庫にしまうと提案したが、俺ばかりに頼るのは良くないという二人の意見に押し切られた。


 アリシア……。自分が頼られるのは良いが、人に頼るのは苦手な性格なのか?


 そんなことを考えながら、手に荷物を抱えた俺達三人は宿に向かっていた。


 しばらく歩いて、宿が目視できる所まで来たところで、俺達の前に五人の冒険者が立ち塞がった。一人のリーダー格の男が、一歩前に出てきた。


 「君らが噂の新人パーティーか?」



どうだったでしょうか!?今回は!?

ぜひぜひコメント下さい!

と、最近ルウシェの登場がないのでこれからは彼女と共に前書き後書き書こうかな~?


ルウシェ「私の出番はいつなんだろうな~。早く来ないかなぁ……。」


 とのことですので、私もルウシェが早く登場できるように執筆速度を上げなければっ!!

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