2日目
王国竜騎士団で所属する竜達は500体を超え、竜種も20を超える大所帯である。
その飼育、調教、繁殖を一手に引き受けるのが第四部隊、育成課。
他の部隊、特に戦闘を専門とする隊からは〝雑用係〟との蔑称で呼ばれる事もある。
彼らは戦場には赴く事はなく、日がな一日、竜と共に生き、竜の世話をする事を職務としている。
だが、竜の中には夜行性の種族もあり、実際の戦場には行かないが、彼らの日常もまた、一日中が戦場なのだ。
そんな第四部隊育成課に所属しながらも、前任の飼育係の痕跡を探る事。それがクリムトの任務である。
では、ここで王国竜騎士団、第四部隊の日常を覗いていこう。
竜舎の朝は早い。
空が白み出すより先に、竜達は目覚める。
第四部隊の朝は、まずは朝食の用意からはじまる。
草食竜、肉食竜、雑食と、多種多様な竜種の生育や好みに合わせて食事を提供していく。
そして竜舎の清掃、竜達の体調管理、水龍達の沐浴までを行い、一息つく頃には、既に太陽が真上に来ている。
息つく間もなく昼食を与えて、運動をさせる。
戦闘用の竜には個別に設けられた訓練メニューがあるので、散歩や運動、戦闘訓練を行う。
その際にも調子を見て、成長度合いを確認しなくてはならない。
性格に難のある竜は、調教や矯正もメニューに組み込まれる。
訓練を終える頃には、すっかり日が暮れているが、まだ彼らの一日は終わらない。
今一度、竜舎の清掃と夕食の準備である。
竜達の夜の営みを管理するのも仕事の一つ。
より良い竜種を生み出すために、優れた竜の交配、繁殖も仕事に入る。
逆に増えすぎても良くない。
繁殖期を見極め、相性のよいパートナーと同じ竜舎にするのだ。
と、一日の流れを見てもらっただけでも分かると思うが、まともに寝る暇もない〝雑用係〟である。
望んでこの隊に配属される者は少なく、望まない者も当然いる。
多くは、元は戦闘部隊で活躍していたが、肉体的、精神的に戦闘ができなくなってしまった者や、そもそも戦闘に不向きな者。
家業で畜産を行なっていた者なども優先して配属される。