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「はい。会えるのでしたら、……いつまでも」

 ミナにしてはちょっといじらしい言葉にリクは一瞬瞠目したが、すぐに安堵したような穏やかな顔つきになった。

「そうか。良かった。なあ、俺も約束するんだ。だからお前も約束してくれ。俺を待っている、と」

「……! はい!」

「ん、ありがとう。おかげで頑張れそうだ。絶対に、かっさらってきてやるよ」

 それはまるで――恋人同士がお互いの再会を誓い合うような、そんなとろけそうな響きがあって、ドクドクとミナの小さな胸が躍る。

 それに、かっさらってきてやる、というのは……。

 彼が王宮に戻れることになったのは他の王子たちと競えるほどになったと判断されたからだ。そしてそこで競い、ただ一人の勝者だけが、あるものを手にすることができる。つまり……それって、ええ……!? この人まさか……――と、リクは手をミナの頭からおさげに映し、かつてよくやっていたように指でもてあそび始めてミナは思考を中断した。

「ぁ……」

「……なんだ?」

「ちょっとくすぐったくて。それと――」

 ちらりとミナは戸口へ視線を向けた。リクも気づいていたようで、同じ方向を一瞥すると、

「ステンか」と呟いた。

 もう離れて準備しなくては。でも、この温もりに触れていたくて、離れたくない。

「チビ、迎えが来るまで多分時間あるだろ? だから後で……いつかのおあずけを清算しろ」

 ミナを離したリクが耳元で囁くものだから、ミナの口からはあえかな声が漏れる。

 ――いつかのおあずけって……、キス……のことだよね?

 ミナからキスができなかった日、次回もあるからとかなんとか言っていた。彼は後でミナほうからキスをしろと言っているのだ。

「――リク王子、失礼します。あ、ミナさん」

 初めての奉公だという、まだ十三歳になったばかりの小柄なステンが、荷物を詰める鞄や紐などの道具をあれこれ持ってきて戸口に現れた。

 今度は二人は自然と距離をとった。だって、この後の約束があるから、少しくらい離れても平気だったから。というかいま気づいたのだが、戸、開けっ放しだった……。

 そんなに大きな声は出していなかったと思うけれど、耳ざといフレデリカや勘付いている女官が聞き耳を立てていたり、なんてことはないだろうか。もし聞かれていたのなら後で二人にどんな顔をして会えばいいのだろうか。

 ステンがクローゼットをかきまわし始めたのを尻目に、ミナは静かに退室した。そして準備が終わった後リクに部屋に呼ばれ、馬車が到着するまでの間、二人は熱く唇を重ねた。 

 ミナのほうからしろ、とリクは言っていたが、抱き合うなりお互いにお互いを求めてしまったので、どちらが先だったかは不明だった。

 そしてその夜、馬車はリクを乗せ、王都へ帰って行った。

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