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 ――どうしよう。どうしよう!

 ミナは悪夢にうなされるように激しい混乱に陥った。このままじゃ彼が死んでしまう!急に訪れた災難に動転し、ただ最悪のことだけが脳裏に浮かび、エリックに襲われそうになったときよりも恐怖を覚えひたすら声を上げて泣いた。

 しかし本当にうなされているのはリクのほうだ。息も絶え絶えの彼が、死なないで、死なないでと子供のように泣きわめき散らすミナに、「……バカ! 死っ、なねーよ。だからっ、クッ……、落ち着けって」と無理やり言葉を絞り出してくれた。彼が反応を示してくれたことに安堵し、いくらか平静を取り戻す。そうだ、泣いたってダメだ。ミナはとめどなく流れる涙を服で拭った。

 鼻をすすりながら、どうしたらいいのか、考えろと自分に言う。

 まず女官に知らせなくては。一人では何にもできないのだし。そう思ってよろめきながらも立ち上がった。だが、いまから医者を呼んでも到着するのは早くて数時間後。ましてこんな夜分だ。期待できない。

「……っ、あ、そうだ……!」

 ミナがあっと思いついたのは彼女の有能な同僚の存在だった。魔女フレデリカ。フレデリカのほうが間違いなくヘボ医者より役に立つだろうし、いますぐ診てもらえる。だが、昼間の使命のせいで、彼女は夜は死んだようにぐっすり寝ていて滅多に目を覚まさない。リク同様、彼女も寝起きから完全覚醒まで時間がかかるタイプなのだ。

 ――そんな……!

 また目の奥から涙が溢れてきた。せっかくつかみかけた希望があえなく霧散してしまった。だがとりあえず女官には知らせに行かなくてはいけない。ミナは震える足を動かし、廊下へ出て物音を聞いてハッとした。

 そうだ。フレデリカ、今夜は起きてる!

 大事なことを忘れていた。今日彼女に禁書を含めた大量の書物を届けたばかりだ。短時間で読破できる量ではない。おかげで覚醒状態に入ったフレデリカは、今夜ばかりは起きている! 

 やった! と、はやる気持ちを抑えながら走って起きているかどうかの確認もせずに彼女の部屋の扉をドンドンと叩いた。

「フレデリカ! フレデリカ!」

「……ミナ?」

 ややあってから、こんな夜中に何事だと、いかにも怪訝そうな声が応答した。

「よかった! やっぱり起きてた! ねえフレデリカ、お願い、助けて! 殿下がっ……大変なの!」

 嬉しさのなかに悲しさを混ぜた同情を誘うミナの声音に、フレデリカはこれはただ事ではないと、髪型と服装が乱れたままであるにも関わらず飛び出してきて、青ざめながら泣いているミナの肩を揺すり、問う。

「何があったの?」

「と、とにかく来て!」

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