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 食事を終えるとミナは念のため寝間着ではなく仕事着で椅子に腰かけていた。

 念のため、というのは先ほどのリクとフレデリカと三人での会話で生まれたあの発言のことだ。「今夜、こいつ俺の部屋だから」とリクはそう言って一時的にミナを救済したが、それはその場限りのことでまさか本当に夜を二人で彼の部屋で過ごすわけはあるまい。少なくともミナはそう思っているし、そうでなきゃ困る。

 ――……まさか、待っていたりしないよね?

 どうせ今夜もクラブへ行くのだろう。あとから聞いた話なのだが、このあいだミナの部屋でキスされたあの夜、リクが廊下でミナを見つけたのはちょうどクラブへ向かうおうとしていたところ出くわしただけだったらしい。結局その日は行かなかったらしいが。

 腕をだらりと伸ばしながらミナは天井を仰いだ。フレデリカの質問、「仲が良いのか」という言葉が脳内をぐるぐると駆け巡る。

 遊ばれているだけのような気もしなくはない。だがリクなら遊び相手くらいごまんといるだろう。手近、という意味ではミナがもっとも適しているけれど、誰でもいいはずはない。

「……わかんないな」

 彼の何もかもが。今夜どうしたらいいのか。これからどうなるのか。

 考えているうちに許容範囲を超え、ミナは両手で顔を覆うと椅子から降りた。

「……行くか」

 もし待っていられたら明日絶対何か言われるし、待っていなければミナが少し恥かいて終わるだけ。そして忘れればいい。それなら後者のほうがいい。このままでは眠れそうにない。

「こんばんは……あの、ミナです」

 リクの部屋まで来ると、緊張しながらも軽く戸を叩き、自分の名を告げた。

 すぐには返事が来なかったので寝ている? もしくは外出中かな? とそれならそれでいいと踵を返そうとしたところで扉が開いた。寝間着姿のリクが何も言わず目を丸くしてミナを見ている。

「あっ……すみません、寝ていましたか? で、ですよね! 夕方の……冗談だとは思っていたのですが一応、というか確認したほうがいいかなと思いまして。それじゃ失礼します、良い夜を」

「待て。入れ」

 リクは、恥ずかしそうに苦笑いを浮かべそそくさと逃げようとするミナの腕を掴むと部屋に引き入れた。

「殿下、もうおやすみだったのでは?」

「ああ。お前もだろ? ――て、あれ」

 リクがいつぞやのようにミナをベッドに入れようと横抱きに抱えて彼女の服を見て首を傾げた。

「それ普段着だよな?」

「あっ、はい」

「どっか行くつもりだったのか?」

 ミナはぶんぶんと頭を振って否定した。

「いいえ」

 いくら夜に訪ねます、といっても主人の前で寝間着姿をさらすなどありえないだろう。おそらくリクはそれがわかっていない。説明するのが面倒なので黙っておく。

 それにしても今夜はクラブへ行かないつもりだったのか。珍しい。そう思うと同時に、もしかして実はミナを待っていたのではないか……などと邪推してしまう。しかしそんな考えはすぐに打ち消した。それはない。彼は寝ていただけだ。お茶も出されていないし、どことなく眠そうな、疲れているような感じがする。

 リクはひとまずミナをベッドに降ろし、隣に腰かけた。当たり前のように肩や腕、太腿が触れ合っているが、お互い気にしていなかった。むしろそうしていないと落ち着かないかもしれない。

 リクがミナの服を見ながら、

「ふぅん。で、それ、他にスペアあるのか?」と聞いた。

「ありますよ」

「……髪は?」

「はい?」

「コレ」リクはミナのおさげを指でいじり出した。「寝るときもほどかねーの? お前この髪型じゃないと死ぬの?」

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