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 あくる日、久々の超早起き――一般の人にとってはごく普通か少し早い――をして、眩しすぎる太陽に目を細め、まだ夢の中いる頭で身体だけは機械的に動かしてささっと準備を整えると、眠い目をこすりながら城を出ててきとうに馬車をつかまえて乗った。

 馬車に乗るのも久しぶりだった。

 初出勤で王都から迎えに来たやたら豪華な馬車に乗って配属先であるいまの離宮に行ったんだっけ。そうだ、あれはもう数カ月も前だ。懐かしい。もうそんなに経ったのか。そんなふうにしみじみと追想しているうちに、ミナはいつの間にか寝入っていた。

 窓から入ってくる朝の清々しくちょうどいい感じに冷たい気持ち良い風とか、少し激しめに揺れる車内がミナをあやす揺りかごのようで、ミナは下りる直前まで目覚まさなかった。寝ていたはずなのにそれらの幸福な気持ちをはっきりと感じていた。朝がこんなに素敵な時間だったのを、すっかり思い出させてくれるいいひとときだった。

 王都に着くとお昼時で、そこかしこから焼きたてのパンや肉の食欲をそそるいい匂いが漂ってきて、ミナは人でにぎわう王城前の広場の屋台で肉と野菜の挟まったサンドパンを買って腹を膨らませた。満足すると、ようやく王城に入っていった。


 あのサンドパン美味しかったなあ。ここでの食事は基本リク以外質素だから……。別に贅沢をしたいわけでも大食いというわけでもないのだけれど。もう一つくらい帰りに買っておけばよかったかな、とそろそろ腹が減ってきたミナが後悔していると、目の前で、自分より空腹なのか食欲(?)を露わにしているフレデリカが口元に本を近づけひと噛みしようとしている。

「わっ! ちょっと、フレデリカ! 本は食べ物じゃないよ!」

 びっくりしたミナが叫ぶと、彼女はふふふ、と妖艶に笑って見せる。

「あら、あんまり可愛いから少しくらい舐めたっていいじゃないの」

 食べるじゃなくて舐めるつもりだったのか。ならいいか、と一瞬納得しかけそうになったが、舐めるも食べるも本への正しい愛玩ではないという点では変態行為に変わりはない。というか確認は終わったのだろうか。

 止める気配がないので、ミナは見てはいけないとばかりに目を逸らして廊下へ出た。そして彼女が本を味わっているあいだ、さっき廊下の隅に置いておいたものに手を掛けた。なかなか重量のあるその布に包まれた塊を「よいしょっと」と持ち上げて、フレデリカの前に持ってきた。

「じゃーん! 変なことなんかやめてちょっとこっち見て、フレデリカ!」

「あら……何かしら……まあ!」

 机にある本を一旦端に寄せ空いたところにその塊を置き、もったいぶりながら布をよけると、新たな本がどかっと出てきた。一冊手に取り歓喜を大きくするフレデリカに、ミナはにやりとしながら、内心でまだまだだよ、と思いながらこそっと彼女に告げる。

「最後のページを開いてみて」

「最後……? えっ……――あ!」

 途端にフレデリカが口を開けたまま固まった。

 思った通りの反応だ。ちょっと面白い。

 いまミナが持ってきた本は、実は他の本と少し違う。何が違うのか。


 門前で衛兵に王宮の教育係の証である腕輪を見せ身元確認を済ませると、「今日は、あの、ちょっと調べたいことがあって……それで図書館を利用したいのだけど」と言い添えてから、言い付けどおりに女官からの手紙を渡した。第二王子のリクが関わっているとあってか、衛兵は血相を変えて早急に城内へ駆けて行った。衛兵は戻って来るなり図書館で使える貸出カードともう一枚、別のカードをミナに渡した。

「どうぞこれを持って、館長のもとをお訪ねください」

「……? はあ……」

 何も館長でなくても係りの人であれば誰でもいいんだけどな、と思いながらちょっとドキドキしながら図書館に足を踏み入れた。外観の豪奢さとは異なり、館内は静かで落ち着いた雰囲気だった。シックな色合いの多い本に合わせてか、絨毯や壁紙、本棚やその他机や椅子も似たような色使いが施されている。ミナはすぐに気に入った。

 受付から遠く離れたところに館長室はあった。訊ねると、離宮とはいえ王宮の使用人とあってか、すぐに対応してくれた。そして例のカードを、館長と名乗る、人当たりの良さそうな柔和な笑みを浮かべた年配の彼に渡した。見たところ本好きというより子供や動物が好きそうな感じがする。彼が本好きかどうかは知らないけど。

 渡されたカードを一瞥しひっくり返すと、途端に彼はニコッと笑って立ち上がった。

「ほほう、左様ですか。もちろん喜んで開けますよ。ささ、お嬢さん、どうぞついてきてくだされ」

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