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「それは……」

 体調が心配で、と素直に言ってもいいだろうか。その件については本人はあまりとやかく言われたくないようなのだ。

 ミナがなかなか答えないでいると、ずばり、

「俺のこと好きなのか?」と一点の曇りもない澄んだ眼差しで堂々と聞いてきた。

 ミナは一瞬何を言われたのかわからず、口をあんぐりと開けたまま固まった。そして急に沸騰して我を忘れて叫んだ。

「……はあああああああ!?」

 こいつは……この男は何を言っているんだ? ミナの中の何かが爆発し、混乱した。

 たしかにあなたは顔だけは恵まれているし、最近は見直しつつもあるけれど……でも、でも……! 勘違いしそうな流れでもあったけれども! 女性のみんながみんな、あなたを好きなわけではないし、たとえ好きだったとしても身分に差がありすぎる。だいだい、好きだと言ったらどうするのだ。あなたはいいけれど、こちらを待っているのは地獄じゃないか。

 噛み付く勢いでうぬぼれもいい加減にしてください、と言いそうになって慌てて口を噤んだ。獣の咆哮のように怒れるミナとは正反対に、リクが見るからに悲しそうにしょげていたからだ。

 しゅん、と頭を下げて運命を諦めた小動物のように頭を下げている。これではまるで獰猛な大型動物がその餌を食す一秒前、みたいな図ではないか。私は自分より弱くて小さいものをいじめる趣味はない。怒りが動揺に変わる。

 これは嘘でも好きだと言わないといけない雰囲気だ。ミナはんん、と咳払いをして、

「えっと、……す、好きですよ! はい、もちろん。だって殿下はお仕えしている主人ですもの、やだなあ、当たり前じゃないですか!」とからからと笑ってみせた。

「…………」

 好きの意味が違うのは最初からわかっていた。リクの言う“好き”は、ミナには縁のないものなのだ。それでついさっきイラついて叫んでしまったのだ。

 リクは明らかに嘘だとわかっているのか、もしくは補足が気に入らなかったのか、依然として下を向いたままだ。

「……殿下、泣かないでください」

 俯いているリクの顔は見えないけれど、頭をなでたくなるくらいの悲哀が漂っていたのでミナはそう言った。その言葉に腹が立ったのか、リクは下りてくる前髪をかき分けてやっと顔をあげた。

「泣いてねーよ、アホ。でも……そうだな……。お前のせいだ。――慰めろ」

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