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「でんっ、か……」
リクが角度を変えるわずかな合間に息継ぎをするも、次から次へと柔らかい唇を押し付けてくるので、ミナは息苦しさとあのときとは比べ物にならないくらいの情熱に翻弄されていた。なぜ彼はいま私にキスをしているのだろう。
しかし、彼は考える余地を与えない。
口からリクの熱を感じるたびに、それは全身に駆けめぐって気を失ったみたいに思考を侵していく。頭の中がまっ白になる。ミナは何も考えられずリクの執拗な口づけになされるがままだった。
ミナを捕獲し己の走る欲求の勢いのまま、リクはミナをベッドに押し倒した。
「あ、のっ……あ!」
すかさず覆いかぶさってきたリクがミナの中に入ってきた。
その強制的な侵攻にミナはなすすべもなく、深くまで開かされた。それどころかずっと待ち焦がれていたかのようにすんなりとリクを呑みこんだ。何も考えず彼だけを感じ、ひたすら彼に征服されれば、まるで心地良い酔いのように身体は火照り、溶けてしまいそうな感覚に陥ってきた。中を探られるたび力が抜けていき、いっそうリクの侵入を許してしまう。
「……っ、なんで……っ、そんなふうに受け入れるんだよ……! ああもう、クソッ!」
甘い感覚に酔いしれていると、突如思い立ったようにリクが顔を離し、自らの髪をくしゃくしゃとかき乱し始めた。ミナはすっかりぼんやりしていた。ゆっくりとまばたきをしながら、ブツブツひとりごちるリクを見上げる。
「殿下……?」
キスの余韻に浸っているミナの口からは自分でも驚くくらいの甘ったるい声が出た。小さく喘ぎながら紡がれた声はまるで続きを待ちわびているかのよう。
いつのまにか涙は止まっていたがまだうるっと潤んでいた。熱に浮かされているような色っぽさのにじむミナと目が合えば、リクは勘弁してくれとでもいように頭を押さえた。
「お前さ……誰にでもこうなのか?」うめくように彼が言う。
「……? こう、というのは……?」
「こうやって簡単に受け入れるのか? 拒否の一つもしないでさ」
「それは……――ン!」
怒っているのか、リクは顔を顰めながらも近づきミナの両手をベッドに縫い付け、再び口を塞いできた。
「……ああでも、泣きやんだな」
そう言うと優しい顔でくすりと笑い、頬にキスを落とす。翡翠の瞳が柔らかく、愛しげに見つめてくる。
――ななな、何これ……!
ミナはりんごのように赤い顔をリクからそむけて枕にうつ伏せた。気恥ずかしいけれど甘くてうっとりする幸せを感じていた。
「どうした?」
不思議そうに眺めるリク。とんでもなく恥ずかしい。ミナは両手で顔を覆いながら思う。
――あなたこそ、どんな女の子にもこんな、勘違いしそうな卑怯なやりかたで慰めているの?
「…………いいえ」
それを思うともやっとして、いままでの幸福感から一転、穴の中へ落ちていくように暗い気持ちになった。
それがなぜなのかはよくわからないが、このままでいるのは辛かった。気持ちを切り替えなくては。何かいい話題……と考え、ミナが写真を出すまえ、リクが何かを言おうとしていたことを思い出す。
「それより、あのっ、さきほど、何か言いかけてませんでしたか?」
ミナはいまがチャンスだ! と起き上がった。乱れた髪をてきとうに整え、恥ずかしさを笑ってごまかす。
「え? ああ……」
薄ら笑いを浮かべるミナに、不可解だという表情でリクが答える。
「お前最近俺のことすげー見てるよな? なんで?」




