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ミナは興奮気味に叫んだ。
ひらめきのような快感があって、どうだ、と鼻を鳴らし少し得意げでもあった。しかしフレデリカを見て、ミナはあれっと首を傾げた。
「フレデリカ? どうしたの?」
「…………」
尋ねてみるも彼女は考え込んだように顎に手を当てたままで、ミナの質問に答えない。あれ、もしかして自分の読みは外れたのだろうかとミナは考えた。薬は全然関係なかった? そうだとすると、これだけ自信満々に言っておきながら、違っていただなんてとても恥ずかしいではないか。喜びの興奮ではなく動揺でドッドッド、と鼓動が速まっていく。いつものことながら三人だとイマイチ話に乗り遅れてしまうジャックが、ミナとフレデリカを交互に見やって次のアクションを待っている。
「あのう……もしもし、フリーダ嬢?」
ミナはあえて本人の嫌っている呼称で呼んでみた。拒絶反応でもしてくれるかと思ったのだが、無駄に終わった。
頼むからせめて早急に返事をして、間違っているなら間違っていると言ってくれないか。沈黙がとても苦しい。
「それはさ……」
フレデリカがようやく口を開いた。安心したミナは倒した椅子を元に戻して座りなおして彼女の続く言葉を待った。
「――最初からわかっていたことだわ。わからないのは、そのサキュバスの成分なの」
「……はい?」
ミナは目が点になった。わかっていた、とは一体何がだろう。ミナはまさかね、と思いながらも念のため確認する。
「えっと……つまり、フレデリカは私が気づく前から殿下の異変はサキュバスのせいだって知っていたってこと……?」
「ええ」
フレデリカは当然じゃないの、何を言い出すのよ、といでもいうような顔で頷いた。
「……あ、そうなの……あはは……」
だったら最初に言ってほしかった。
知識の差からか、二人の間には認識の相違があったみたいだ。ミナは恥をかいたしなんだかショックだった。頭を下げてズン、としょげるミナに、ジャックが軽く肩を震わせて笑いをこらえているのが目の端に見えた。
「どんな効き目を持っているのか、とても興味があるわ。どんな組み合わせなのか、とか既存の成分の組み合わせでなく未確認の成分なのか。ああ、すごく興味があるわ! 現物がほしいわ! どうやったら手に入る?」
お次はフレデリカがエキサイトしてきた。声を荒げ、いても立ってもいられないのか立ち上がってその辺をうろうろしだした。
「どうやったら……って、そりゃクラブに行って入手するしか今のところ方法はないよね」
ふて腐れ気味のミナが、はしたなくも授業中のリクのように机に肘を付きながら言う。
誘導尋問が成功したフレデリカがパチン、と指を鳴らし「じゃあ、お願いするわね!」と妖美なキラースマイルを向けてきた。
「……まあそうなるよね」
クラブへ行くとしても彼女がついて来ないのはもうわかっているが、満足げな彼女にたいして、ミナはなんだか丸投げされたみたいであまりいい気がしなかった。
けど異変に気付いたのは彼女だし、それぞれにちょうどいい役割というものがあるのだから仕方がない。
ミナとジャックでまた潜入するとしよう。そう思ってじゃあまた行こうかとジャックに声をかけると、二つ返事で了承してくれると疑わなかった彼の口から、予想外の返事が返ってきた。
「いや、待て。これ以上は危ないんじゃないか?」




