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「へえ……そうなんすか」

 事を重く受け止めているジャックがフレデリカのほうを見ながら、彼女の意見に真剣に耳を傾けている。

「ねえ、ジャック。起こすとき、殿下に何か変わった様子はなかった?」

 ミナが聞くと、ジャックは懸命に思い出しているのか、パンをちぎる手を止めた。

「いつも通りかな。……いや、若干前より静かだな。おかげで起こしやすくなったけど、最近は前より寝起きにぼんやりしているのが目立つな。まだクラブには通っているみたいだし、オレはただの寝不足だろうと思ってたけど、違うのか?」

「そこがわからないの」

「ふうん……でも、まだそんなに騒ぎ立てるような状態ではないんだろ?」

「うん。でも心配だよ」

 ミナは本心からそう言った。体調が悪いということ自体危惧すべきことであるのに加えてそれに気づいたのがフレデリカであることに、何か引っかかりを覚えていた。

 普通の人間よりも賢く、動物的な本能が鋭い魔女である彼女が危機感を抱いているということは、相当な災いが待っているのではないかとミナはいてもたってもいられなくなっていたのだ。

 それに、失礼だけど彼女が心からリクの身体を心配しているようには見えない。

 二人が特別な仲かどうかははっきりしてないけれど、そうだとしても薬以外に純粋に心配するような人だろうか。同僚として数か月間彼女と接していくうちにわかったのだが、すでに大地や自然、動物たちと繋がっている彼女は人に執着しない。つかず離れずがちょうどいいらしく、私たちよりずっとドライな関係を好む。

 ミナには、フレデリカはリクの症状と不可解さ、そういった謎に関心を持っているように見える。そしてそれの謎を解き明かしたいと熱望している。

「――ああ!」

 ミナは突然叫んで勢いよく立ち上がった。勢いづいたせいでドン、と座っていた椅子が倒れた。

 ――わかった!

 ミナはリクの原因不明の体調不良の謎が突然目の前の扉が開いたように、パッと頭に浮かんできた。答えは考えずとも目の前にあった。

 フレデリカが大きなヒントを出していた。

 そうだ、そもそも彼女が興味を持っている時点で答えは明確じゃないか。一つしかない。彼女は本能的に“それ”が関わっているとわかっているのだ。だから興味を持ったのだ。間違いない。最近行っていないからすっかり忘れていた。

 何事だとミナを不思議そうに見上げているフレデリカとジャックに、ミナは高らかに言う。彼女といえば薬。薬といえば……、

「――サキュバスだよ!」

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