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「うん? うーん。……あー、言われてみれば、そうかも…………?」
フレデリカの指摘に、ミナは最近のリクの行動を思い出す。彼女の言う通り、ここ数日は授業中、いたずらよりも寝だすことのほうが多かった。……というより、連日寝ている。しかもフレデリカの子守歌という名の催眠術にかけられなくても、自主的に寝ている。
「前は眠たくなくても授業が嫌で寝ていたじゃない?」
「ああ……! たしかに」
ミナは感心するように二、三度頷いた。よく見ているし、よく気づくなあ。……私は気づかなかった。なぜかそのことに、対抗しているわけじゃないのにミナはうっすらと敗北感を感じた。
ミナの共感を得ると、フレデリカは珍しく顔を曇らせた。なんだろう、とミナは目を瞬かせる。フレデリカは憂うように長い睫毛をゆっくりと落とす。
「ここ何日かは寝たくて寝ているように見えるのだけど……」
「……?」
一度聞いただけでは彼女の言わんとしていることがよく理解出来なかった。いつも寝たくて寝てるじゃない、と。少しの間頭をひねって考えてみる。
――! わかった!
多分、眠らざるを得ない、ということだ。つまり、数日間リクは睡眠不足か、疲労によって寝ている。
――……えっ、それ大丈夫なの?
つまり体調が悪いということ? ミナはベッドに横たわるリクを見た。たしかに最近大人しいし、そう言われると具合が悪そうに見えてきた。このまま放っておくのが心配になってきた。フレデリカもそう思っていたらしく、何もしていない授業が終わると、二人は女官にその旨を話した。
早速夕食前には医者が到着し、「どこも悪くねーよ」と不服そうにしているリクを診てもらったが、特に異常は見当たらないという。
「少しお疲れのようですな。十分休息を取られれば、問題ないでしょう」
医者はそう言ったと女官に告げられた。慣れない勉強のせいで疲れているのではないですか? だとすればそのうち治るでしょう、と付け加えると女官は気にした様子もなく自分の仕事に戻っていった。
「はあ……」
ミナとフレデリカは腑に落ちなかった。二人は顔を見合わせ、どうしたものか、と肩をすくめた。
その後夕食で使用人用のテーブルをミナ、フレデリカ、ジャックの三人で囲っているとき、先ほどの医者の見解に異を唱え、話しあっていた。
「本当にあのままで良くなると思う?」
ミナがサラダをつついていたフォークを置き、眉根を寄せながら二人に問う。
「ならないと思うわ」食事を終え口元を拭っていたフレデリカが即答する。口調に断固とした迷いのない意思がうかがえる。「だって、休んでいるはずなのに、だんだん悪くなってるじゃない」




