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 タルト食べ終え満足していると、もう一つあるらしくそれも荒々しく口に突っ込まれた。

 その乱暴さが人の世話をすることに慣れていないのを如実に伝えており、一生懸命な姿はちょっとくすぐったい。

 ほどなく二個目もすべて胃に収めると、ミナは自分が汗まみれで髪も服も乱れていることに気づき、いたたまれなくなって俯いた。

「どうした?」

「な、なんでもないです……それより、殿下はなぜここに?」

 素直に言ってしまうほうがもっといたたまれない。ミナは話を切り替える。そんなミナの意思に気づかないリクは、「ああ、そうだな」と至極まじめに答える。

「生存確認に来た」

「ああ……」

 授業のことを気にしていたのか。

 それについてはミナは別に怒っていないし、身体は無事だし体力は回復したのでどうってことはない。だが彼は少しやりすぎたと責任を感じていたのか。だとするとこのタルトはお詫びか何かだろうか。美味しかったし、それはそれで嬉しい。

 ただ、そうだとしてもあまり勝手に入ってほしくなかった。

 こんな格好だし、きっと汗臭いだろうし。ミナはなぜか、特にリクにはそういうところを見られたくないと思っていた。それに気づいたのはいまこの瞬間だけど。

 しかもリクといると、もともと気にしていた己のとても貧弱で子供っぽい外見が気になってくるからますます嫌だ。一度ふくらみのない胸を見られてしまったが、あれは出来れば消し去ってほしい出来事だ。覚えていないといいんだけど。

 ミナはグイッと残りの水を飲み干すと、もう身体は動くし、風呂に入りたいと思ってリクに言う。

「殿下、ありがとうございました。おかげで生き返りました!」

「別にそういうつもりはなかったけど……」

「それで、その、私ちょっと風呂に行こうと思いますので、失礼しますね。殿下ももうお部屋に戻ってお休みください」

 どうせクラブに行くのだろうけれど、一応そう言っておく。

 わざわざ出向いてくれた人に対して、少しそっけないだろうか。しかし部屋を出て行ってほしいのは本音であるのだし、これ以上あまり一緒にいても対処に困る。

「……ああ、そうだな。俺も今日は疲れたから寝ようと思う」

 静かにそう言い、リクはくるりと向こうを向くと立ち上がった。

「今夜は行かないんですか?」

 まるでもう就寝するみたいな言い方をしたので、気になって出て行こうとする背中におずおずと尋ねる。無論、クラブへ、という意味だ。

 リクはこちらを振り返もせずに「そうだ」と肯定した。

「そうですか……それは良かったです」

「……そういえば、女官がいつもより多めにお前の食事を残しておいたみたいだぞ。下に行けばあるんじゃないか」

「えっ、そうなんですか?」

 それは……またしても思いがけない喜びだ。リクも女官も自分を心配してくれていたとは。明日、朝一で女官に詫びと礼を言わなくちゃ。

 言いたいことは尽きたのか、それだけ伝えるとリクは部屋を出て行った。

 薄闇の中で揺れる彼の背中が、少し寂しそうな、疲れていたような気がした。

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