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「チビ。もう二度と来るなよ」

「えっ、と……」

 席に着くやいなや、向かいに座るリクがむすっとした顔でそう言い放つ。まずミナはリクがごく当たり前のように目を合わせて話してくれていることに戸惑った。嬉しい反面、慣れないのですぐに反応できない。それと、この人の中で私の呼び名はチビで確定なのだろうか。名もなき空気よりはいくらかマシではあるが多少異議あり。

 無論何の話かはわかっている。クラブのことだ。もう二度とあそこへ来るなよ、と言っているのだ。

 ジャックより説得力のあるリク王子に昨夜の話をされたのでは、もうあれが現実だったのだと認めざるを得ないではないか。ミナはまたキスのことを思い出して顔が火照ってしまう。それに比べてリクのほうは何事も無かったかのような、いつもの不機嫌顔でいる。この差は一体なんだろう。リクにとっては、あれくらいなんとでもないことなのだろうか。そうだとしたら、自分だけ意識してしまって、悔しい。

「お前みたいなガキが来るところじゃない」

 肘を付きながらリクが落ち着いたトーンで話しだした。そうされると生まれながらに持っている、上に立つ者の威厳みたいなのを感じてわりと大人っぽくみえる。こちらが説教されているみたいで、なんだか腑に落ちないのであえてまともに取り合わないとこにする。

「……誰がガキですか」

「ガキじゃん。チビでうるさいところが」

「背は低いですけど、うるさくはないです」

 あと、精神的にはあなたよりはずっと大人ですよ、と言いたいところだが事実なだけに礼を欠きそうなのでそこは黙っておく。リクは心外だ、という顔つきになって反論する。

「は? うるさいだろ」

「普段私全然喋ってないじゃないですか!」 

 というか、喋ると喋るなと言わんばかりに妨害してくるし、そもそも空気扱いしているくせによく言うわ、と憤慨しているとリクから意外な言葉が出てきた。 

「髪が」

「……髪?」

「ああ。光りすぎてうるさい」

 ミナは指さされた自分のおさげを片方摘まんで目の前に持ってきた。確かに父譲りの明るめの金髪だ。だが、この色を持っているのは自分だけじゃないだろう。

「明るい金髪の大人だっていますよ!」

「……うるさい」

 論破されたリクは捨て台詞を吐いてぷいっと横を向いてしまった。今の“うるさい”がミナの髪の“うるさい”ではないことはよくわかった。

 せっかく話せたと思ったら、やはり子供っぽいな、とため息をこぼすと今まで黙って二人のやりとりをニヤニヤしながら眺めていたフレデリカが、「あの……」と声を上げた。

「リク王子、昨夜一体ミナと何があったんですか?」

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