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 一日で最も暑い時間がやってきた。

 気温に比例するかのようにミナの体温も止まることを知らぬようにドクドク上がっていき、汗で服が張りついてしまう始末だった。

 ――どっ、どっ……どうしよう! 

 ミナは現在これまでの人生で最大であろう「どうしよう」にぶつかっていた。

 昨夜の出来事を処理しきれずに、昼を迎えてしまった。理解したくない、といったほうが正しい。あれはそうだ、夢だ。私はちょっと……生々しい、現実ではありえないのだけど、現実っぽいへんてこな夢を見ていたのだ。

 ――そうだ。そうじゃなくちゃ、あれは絶対に起こらなかった。

「殿下みたいな人と、きっ……キス………!」

 許容範囲を超えたミナは、しゅううう、と全身から湯気を出して顔を覆った。愚かにも声に出してしまったことで、リク王子のあの唇の熱をはっきりと思い出してしまった。たとえ夢の世界で起こったことでも、感覚がリアルだったので乙女なミナには恥ずかしい。

「……殿下みたいなお方とキスしたの?」

 独り言を耳ざとく聞いていたフレデリカが目を丸くして聞いた。ミナはぶんぶんと大げさに首を振る。

「ちちちちち違うよ!」

「あら、でも今確かにキスって言ったわ」

「は、ははは……」

「――! 昨日もクラブへ行ったのね! なに、何があったの!?」

 フレデリカの目がきらんと光った。美味しい話題の気配に気づいた彼女は、ミナの肩をしっかりと掴んで拘束した。意外と力がある。

「いやいやいや……行ってない、行ってない……と思う。や~、なんか昨日の記憶がすごく曖昧でね……ほら、寝不足だったし?」

 薬を見た時のようならんらんとした、何が何でも絶対暴いて見せるという強固な意志のフレデリカの眼差しに怯え、ミナは廊下の壁に付けられたアンティークのランプに視線を移した。

「嘘ね。私にはわかるわ。で、キスしたの、しなかったの?」

「キスなんてそんな……」

「目を見て言ってちょうだい。はい、こっちを見なさい、ミナ」

「いやでーす! なあに、フレデリカはそんなにキスがしたいの? なんなら私とすっ――ぎゃああああああ!」

「…………何を騒いでるんだ?」

 リク王子の部屋の扉が開き、傍らで抱き合い顔を近づけあっている使用人を見て、ジャックは呆れたように言った。しかもなんか美女のほうが小柄な少女に迫って、頬を押され拒まれている、という不可解な図。

「ジャック……! フレデリカが私を襲おうと」

 ミナがジャックに助けを乞うように言った。近づく美女の顔を、必死に両手で制している。微妙に揺れるものの、一定の距離を保っている。力は互角らしい。

「するって言い出したのはミナでしょう!」

「“すっ”までしか言ってない!」

「言おうとしたのだから、同じことだわ!」

「変態美女!」

「先にキスだなんて言い出したのは貴女じゃないの! すけべ乙女!」

「はあ……」

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