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「よせ、エリック。いつも言ってるだろ、商品はもう少し丁重に扱えって」

「いいんだよ、コイツの“ウリ”は血だから」

 他の男に咎められても、ミナの頭を鷲掴みにしているこのエリックという男は力を緩めなかった。

 それより、頭の痛さや屈辱よりもミナは男たちの不穏な会話に震えあがった。

 ――商品……? ウリ……?

 どこかへ売り飛ばす気だ。連れて行かれる。これは非常にまずい。

 この場で三人から身をかわせるだろうか。いや、せいぜい一人ならなんとか逃げれただろうが、小柄な娘が護身術程度で大の男三人の魔の手から逃れることは不可能に思える。

 声も出さず震えあがっていると、諦観したと思ったのか、エリックが何か意味ありげににいっと口角を上げて欠けた前歯を見せた。ミナは喉奥で叫んだ。エリックは酷薄な笑みを浮かべたまま、空いている手でミナの胸元に手をかけ、引きちぎった。いくつかのボタンが取れて地面に落ちた。何も身につけていない小さな胸が外気にさらされた。ぞわぞわと悪寒が背中に走る。掴まれたままの頭はじくじくと痛みを増していく。つう、と一筋の涙が頬を伝った。 

 そこでミナは気がついた。さっき自分はせいぜい一人なら逃げれたと思った。逃げれた……。過去形だ。つまり、もう逃げられない。

 終わった。何もかも。こんなことなら、暇だし仕事に付随するから、とか馬鹿な考えを抱かなければ良かった。そしたら私は、もう少しマシな人生を……せめて、父の娘としていくらか正しい道を歩めたのかもしれない。

 ――ごめんなさい、お父様。

 正しいと思ってここへ来た。でも間違っていたようです。やはり私は出来そこないの悪い子みたい。

 受け入れるしかなさそうだった。それにこれは自分が選んできた道だ、悲しいけれど。

 とんだ結末を招いてしまった。

 せめて何も見たくなかった。ミナは目を閉じた。それでも涙は瞼を押して流れてくる。真っ暗闇に沈むと、頭を地面に思いきり放り出され、ぶつかった衝撃で平衡感覚が揺らいだ。

 痛い、と思う間もなく続けて頭が地面に叩きつけられる音がした。だが痛みは感じなかった。代わりに誰かのうめき声が聞こえた。

 ――……えっ?

 二回目の殴打音が自分の立てた音ではないとわかり、ミナは閉じていた瞼をほんの少し押し上げる。

「……!」

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