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 夜空に浮かぶ一つの星を、リクは顎を上げ眺めていた。

 ――眩しい。

 目を細め忌々しげに眺めるその星は、彼の怨念になど気にも留めず輝く。それがまた彼をイラつかせた。幼い頃からずっと、眩しいものは嫌いだった。目障りで、頭痛がしてくる。見上げなければよかった。リクは止まっていた足を動かして静かに歩き出す。

 日が沈み人々が寝静まった頃でなければ、リクはあまり活動しない。密閉された空間を思わせる、闇に覆われた世界だけが自分を許してくれているような気がした。ここでなら息をしていいよ、と。そんな思いを抱えているかどうかはわからないが、この小さくて窮屈な鳥籠にいるやつらは自分と同じように昼間の光の中で生きられないのだろう。

 リクは石造りの鳥籠に慣れた様子で入り込み、鳥籠というより缶詰に近いこの空間で、死んだように迷える鴉たちを眺め、一つ息を吐いた。安堵の息だろうか。わからない。ただ、ここへ来ると、誰かと一緒に居たいわけではなかったけれど、群がるのも案外悪くないと思える。

 リクはてきとうにもらった葉巻に火をつけ窓枠によりかかった。腕の中に抱いた少女が身じろいだ。多分、ただでさえ煙ったいのに、葉巻なんて吸い出すのだから不愉快なのだろう。

 ゆっくりと吸って、肺一杯に煙を満たす。こうすれば少しは充満している煙とニオイの効果を緩和できる。毎晩のように足を運んでいるリクでも、クスリの効果は強烈で油断できない。

「お前も吸っとけ」

「え? な、なぜ……ケホッ」

 少女に向かってふうっと煙を吹きかければ少女はむせた。泣き出しそうになっていたので軽く笑って仕方なく背をさすってやる。ふざけてやったのだとわかった少女は顔を上げ、目に涙を浮かべながらも笑った。そのあどけない笑顔にリクは複雑な心境に陥った。

 ほんの数分前に出会ったばかりの、手も出せない年端もいかぬ少女にたいして、何もメリットもないのに普通ならこんな優しくはしない。

 ――今日はどうやって逃がすかな……。いつも通りで大丈夫か。

 心なしか人が増えてきた。

 ここは二階で、決まった人間以外はそう出入りしないはずなのだが。

 とはいえ、実はリクはここの規律をそれほど詳しくは知らない。知ろうとしなかったのと、こんな偽善者ぶった人助けなんて最初の頃はしようと思わなかったからだ。

 リクは少女を他の奴らに取られないようにと強く抱き寄せた。少女が「きゃっ」と小さく叫んで慌てて口を噤んだ。

 考えた末、人が多いのでとりあえず一階へ降りることにする。二人はぴったりと身を寄せ合いながら――恋人のフリをしながら下へ降りていった。少女はリクに事前に言われていた通り、“なるべく顔を隠し”“恋人のようにふるまう”を、ぎこちなくもきちんとこなした。

 裏口へ出ると、周囲に誰もいないことを確認してから、リクは少女に顔を寄せた。

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