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 困っている優しい母親と駄々をこねる子供(成人済み)のような二人を見ていると、そうだ、とミナはあることを思いつき、

「無理にやる必要はないんじゃないかな。別に今日くらい大事をとって休んでも問題ないと思うよ」と提案した。

 またとない素晴らしいチャンスを絶対にモノにしたいミナは、気がはやってやや早口になってしまった。その間ずっと、ミナの声に被せるようにドン、ドンと王子が床を蹴っていたが無視した。どうかな、とフレデリカに目で問う。彼女は顎に手を当てて「うーん」と考えている。

「そうねえ……まあ、たまには……」

「そうしようよ!」

 この場で一番決定権を持っている現場監督のフレデリカが折れそうだ。あと一押し。

「女官にはどうせバレないし、大丈夫だよ」

 ミナはけらけらと笑って見せた。

 今日はリク王子とフレデリカ以外は立派な睡眠不足なのだ。寝不足と王子の目覚まし係という激務が相まって、きっと今頃はぐっすり夢の中だ。しばらくは起きてこないだろう。

 現場監督も「そうだったわねぇ……」と先ほどの女官を思い出し迷っている。ゴールはすぐそこだ。

「ね、お願い。このまま続けたら、女官の仕事が増えて、本当に生ける屍になっちゃうかもしれないわ」

顔の前で手を合わせ、女官はたとえ死んでも仕事をする前提で懇願する。フレデリカはぷっと噴き出し大いに同意する。

「確かに。でもそれ、ちょっと見てみたい気もするわね……ま、いいわ。今日のところは休みましょうか」

 ミナはそれを聞いて見えない位置でこぶしを握って勝利を喜んだ。

「それでいいですか、リク王子?」

「ああ。さっさと出てけ」

 ぶっきらぼうに言い放ち、依然として顔は上げないままシッシ、と使用人たちを手で追い払う。

「わかりました。では失礼致します」

「……失礼しまーす」

 見えてはいなくても頭を下げ、慇懃に挨拶をするフレデリカと違ってミナは鞄を引っ提げてきとうに言い放った。

 その態度が気に入らなかったのか、王子が「……クソッ」とぼやいたのをミナははっきりと耳にした。けれど顔を反らされたことに比べたら、そんなの痛くもかゆくもない。すっかり王子のどんな攻撃にも耐性ができたようだ。

 部屋を出て自室に戻ると、愛しいベッドに身を沈め、早速企みに向けて休息を取って夜に備えた。


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