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 雑木林を抜け、街へ繰り出すと尾行は格段に楽になった。

 まばらだが人がいる。商店街でもないのに、普通の住宅街でこんな時間にまだ人が出歩いていることにミナは驚いた。ただそれはこのときばかりはツイてると言わざるを得ないだろう。石畳の上を、少々音を立てて歩いたところでミナとジャックの足音だと判別されることはない。

 二人は一気に気を緩め、視線だけは颯爽と歩くリク王子の背中へ向けながら、お喋りに興じていた。

「こんな時間でも皆起きてるんだね。それとも今日って何かあるのかな?」ミナが観光客のように辺りをちらちら見やりながら聞く。

「港の連中だろう。夜でも貨物船は動いているみたいだからな」

 確かに近くにこの町で唯一の、小さな港があったはずだ。

「あっ、入ってったぞ」

 いくつかの似たような石造りの家が次の角まで一列にお行儀よく並んでいる。見たところどれも普通の民家に見える。その一つに王子の姿が吸い込まれていった。

 では場所が分かったところで早速入ろう……といきたいところだがそうもいかない。

 入口の前に門番らしきいかつい男が立っている。ミナは消沈した。せっかくうまく運んでいたのに。なんて説明して通してもらったらいいのだろう。説明が通るような人にも見えないけれど。

 さてどうしたものかと考えているとジャックが唐突に顔を寄せてきて、夜の街というシチュエーションのせいだろうけれど、不覚にもちょっとドキリとした。

「ミナ、腕輪はしてるか?」と、ミナに耳打ちする。

「してるよ」

 ほんのり赤くなった顔を悟られぬように、ミナはほら、と袖をまくって、左腕の銀色に輝く腕輪を大げさに見せつけた。それを見るとジャックは満足そうに頷いた。

「ん、大丈夫だろう。行くぞ」

「……?」 

 何が大丈夫なのだろうかと不安に思いつつもついて行くと、ジャックは臆することなくこちらを鋭く睨みつけてくる門番に対面した。こめかみに傷のあるいかにもガラの悪いその男に、二言三言何か話した後、ジャックはミナの左腕を引っ張って彼に腕輪を見せた。

「こいつは……」

 男はハッと息を呑んで見た目通りのだみ声で呟くと、面食らったように腕輪に見入っている。

「本物ですよ。ほら、ちゃんと“教育係”って書いてある」

「ふむ……」

 ジャックの補足に、目が悪いのか男は目を細め、一流職人によって腕輪に彫られた王家の紋章と、“教育係”という文字をじっくりと読んでいる。

「僕らは正真正銘、王家に仕えている者です。彼らの命で動いています。その僕らを拒むことは、王家に逆らうのと同じです。……つまり、通してくれないのなら……このクラブがどうなるかはわかりますよね」

 ジャックのすらすらと出てくるセリフにミナは唖然とした。

 ――お、脅し……!

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