表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モスタクバル  作者: 朝日
1/2

プロローグ

 かつて人だったモノがあちらこちら転がっている。

 まだ五つにもならない子供は呆然と己の両手を見つめていた。自分が何をしたのか理解ができなかった。


「早く、早く逃げるぞ!」


  爆発により顔面に大きな火傷を負った少年は蹲る子供を背負う。そして迷う事なく走り出した。

  まもなく追手の声が迫り寄ってくる。顔に重傷を負った少年の体力は限界がある。視界だって霞んで見えていない状態だった。こうして走れるのが不思議だった。そして少年から垂れる血が追手の追跡を手助けしているだろう。

  このままでは二人揃って捕まってしまう。

 少年は子供を降ろすと子供の顔をしっかりと見つめた。


「いいか、よく聞け。このまま真っ直ぐ走れ。何があっても振り向くな」


  バシンっと背中を叩かれた子供はよろめいた。戸惑いと躊躇いの表情に安心させるように笑ってやる。


「大丈夫。おれは後から行くから。約束する。おれが嘘ついた事があったか?」


  子供は頭を降った。


「だろ?じゃあ行け!」


  もう一度背中を押すと子供は走り出した。

 小さな足で一生懸命走っている。うまくいけば、あの子は大丈夫だ。

  闇の彼方から怒声がどんどん大きくなってくる。少年は笑みを浮かべて振り返った。そして雄叫びをあげると全速力で走り出した。

 追跡者達へ突撃するために。



 ー おれはどうなっても構わない。ただ、あいつが無事に生きれるならそれでいい。

 どうか辿り着いてくれ。

 避難所に、モスタクバルに。


  夜の暗闇に、少年の叫び声と乾いた銃声が響き渡った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ